ARTISTS
100 Tonson Gallery
Jul 27 - Aug 15, 2019
具体的な題材を取り上げた作品を制作し、著書なども刊行しているコンテンポラリーアーティスト小林孝亘が、自身初の試みとしてバンコクの2019年7月27日〜8月15日、バンコクの100 Tonson Galleryにて公開制作を行いました。
小林は1996年文化庁芸術家在外研修員としてバンコクに滞在したことがあり、その縁からバンコクにアトリエを移した時期がありました。その後東京にもアトリエを構え、およそ12年の間東京とバンコクを行き来した経験があります。今回の公開制作と個展は、バンコク在住時期から付き合いのある100 Tonson Galleryによって実現しました。
期間中作家によるワークショプが行われ、タイ人から欧米人まで多様な国籍の参加者が集まりました。具体的な風景に立体オブジェが描かれたシンプルな画面を見て参加者から質問が飛び、中でも欧米系の参加者は作品を禅と結びつけて解釈したり、グリーンは庭園を思わせるなど、彼らの日本へのイメージが垣間見える面白い時間を過ごしたようです。
開かれたギャラリーという空間では、アトリエとは違って集中の途切れる要素があり、やや苦労があったようです。来場客の来ない午前中の方が筆の進みはよかったようですが、タイ人の観客から未完成部分を完成したものとして質問を受けるなど、アトリエの作業では体験できないシーンがあったそうです。
最新作には以前は描かれていなかったオブジェが登場しています。以前の作品では樹木が生い茂る森が描かれており、暖かくも内省的なイメージのあるシリーズを制作していましたが、今回は背景に樹木だけでなく空が描かれ、より客観的で自然と人工物の対比が鮮明になっています。作品についての解釈は様々ですが、あえて作家からは説明することはせず、観客が自由に感じ取ってくれれば、ということでした。
今回の公開制作では日本から作品を持ち込み、輸送など大掛かりで準備も大変だったようですが、動きのある展覧会はオーディエンスにも特別な印象を残し、作家と作品への興味もより強いものになるため、次なる挑戦が待たれます。
小林孝亘(こばやし たかのぶ)
1986年 愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業
1996年 VOCA展奨励賞受賞
1996年 文化庁芸術家在外研修員としてタイ、バンコクに1年間滞在
1998年 アートスコープ‘98ガスコーニュ・ジャパニーズ・アート・スカラシップ派遣アーティストとして、フランスのロット・エ・ガロンヌに3ヶ月滞在
主な個展
1997年 シラパコーン大学アートギャラリー、バンコク
1998年「Seventy Five Days」アジャン美術館、ロット・エ・ガロンヌ、フランス
2000年「近作展 23」国立国際美術館(大阪)
2003年「MOTアニュアル2003 おだやかな日々」東京都現代美術館
2004年「終わらない夏」目黒区美術館
2006年「愉しき家」愛知県美術館
2009年「眼を閉じて−“見ること”の現在」茨城県立近代美術館
2010年「絵画の庭−ゼロ年代日本の地平から」国立国際美術館
2014年「私たちを夢見る夢」横須賀美術館
2015年「画家の詩、詩人の絵」平塚市美術館他巡回
2016年「エッケ ホモ 現代の人間像を見よ」国立国際美術館(大阪)
2019年「EAT」100 Tonson Gallery、バンコク、タイ
コレクション
国際交流基金
シラパコーン大学
広島市現代美術館
国立国際美術館
栃木県立美術館
群馬県立館林美術館
ダイムラー・クライスラー・ファウンデーション・イン・ジャパン
北海道立釧路芸術館
水戸芸術館
東京都現代美術館
大原美術館
高松市美術館
ヴァンジ彫刻庭園美術館
東京ステーションギャラリー
著書
『小林孝亘作品集−ひかりのあるところへ』(日本経済新聞社)
『小林孝亘-私たちを夢見る夢』(青幻舎)
『ふつうの暮らし、あたりまえの絵-小林孝亘の制作ノート』(求龍堂)