ARTISTS
Jan 12 - Jan 15, 2019
2019年1月12日〜15日、ミャンマー最大都市ヤンゴンで、中部の保養地ピンウーリンを拠点に活動する画家のテッナインウィン氏の個展「エメラルド」が開催された。同氏の作風は、寺院や田舎の風景といったミャンマーの伝統的なモチーフを、大胆な直線や曲線でデフォルメし、印象的なカラーに染め上げているところだ。この展覧会では油彩画30点が紹介されている。
55歳を迎えたテッナインウィン氏の作品の特徴は、ミャンマー美術の典型的なモチーフを用いつつも、オリジナリティあふれる斬新な解釈を加えている点だ。ミャンマーの象徴ともいえるシュエダゴンパゴダを例にとれば、パゴダにたすき掛けするように思い切った曲線を流し込み、その右上に仏陀の後姿を加えた。パゴダの参道に広がる賑やかさを盛り込むなど多くの要素が描かれているが、色合いを使い分けることで全体の一体感を醸し出した。
ミャンマー中部のピンウーリンは、英国植民地時代に英国人に愛された保養地だった。今でも瀟洒な洋館が並び、アートの香りを感じさせる街だ。テッナインウィン氏はピンウーリンで、土木や建築の技師としても活動している。そのせいもあるのか、建築物に焦点を当てた作品も多い。流れるような曲線や、格子模様、交差する直線を多用した作風は、エンジニアの書く設計図を想像させるものがある。
テッナインウィン氏は、自身の作品を「キュビズムの要素を取り入れてミャンマーの伝統を表現した」と解説する。ミャンマーの上座部仏教でよくみられる寝仏や、えんじ色の袈裟をまとった僧侶など宗教的な対象についても、思い切った表現をしている。ぼやっと何がかかれているのか浮かび上がるような抽象的な作品もある。
そのほか、インレー湖で船を操るインター族、独立の父のアウンサン将軍など、ミャンマーを象徴するイメージも斬新に打ち出している。
伝統的なミャンマーの風景や上座部仏教に関しては、数多くの作品が描かれている。その中でも、テッナインウー氏の作品は、大胆な直線や放物線による幾何学模様の独自の世界観が特徴的だ。こうした地方の美術家が独自の作品を作り続けているのも、ミャンマーの美術シーンのひとつといえる。
テッナインウー
画家、1963年生まれ、ピンウーリン在住。ミャンマーの伝統的イメージを新しい解釈で表現している。今回は2回目の個展になる。エンジニアとしても活動する。