ARTISTS

木彫の組み合わせで独自の仏教世界を表現する Utai Nopsiri

Utai Nopsiri
Thai

1970 -

幾何学的な木彫が組み合わせられたインスタレーション作品。タイ人コンテンポラリーアーティストのウタイ・ノップスィリの彫刻作品は木のぬくもりを感じるとともに、電気工具を使わずに計算され生み出された精度の高いパーツの集合によるユニークなフォルムを持っています。彼の独特な製作技法と、その作品によって表現される仏教哲学についてご紹介します。

くさび技術から受けたインスピレーション

「木をつなぎ合わせることで、組み立てに釘や他の材料を使用せず強い構造を保持している古い橋を見たとき、これが私の創作へのインスピレーションとなりました」
ウタイが作品を手がける動機を得た瞬間です。

表面を研磨した2枚の木はくさびとして強く組み合わさり、同時に力を加えると、木は2つの部品に分かれます。くさびは2つの相反する特性を持っているのです。このくさびの技法を用いて組み合わせられた滑らかな木の表面は、安らぎの感覚を伝えています。

ユニークな木彫で表現する仏教哲学

ウタイの作品は仏教哲学の影響を受けています。作品の中には瞑想で使用する手のポーズなどを模したものもあり、熟考、自己認識、不確実性に焦点を当てています。
また円形の作品には「サイクル」が表されています。生きること自体が人間にとってのサイクルであり、息を吸ったり吐き出したり、移住、時間、地球の自転、あらゆるものがサイクルの中にあります。彼はさまざまなアイデアと技術を駆使し、アートをシンプルな形で表現しています。

作品の素材や技法

彼は作品の主な素材として、古い木材を選びました。廃材の山、工場の廃棄物、友人から寄付された木材など、様々なところから木材を集めました。彼が選んだチーク材は、柔らかすぎず硬すぎない質感を持ち、木の年輪が作る独特のデザインは水の波のような波紋を表し、鮮やかなパターンを形成します。

誕生、成長、死といった仏教の思想を表現するため、繋ぎ合わせる木の素材の美しさと共に重要な要素として、手工道具のみを使用し、電気工具を使用しないことがあります。そもそもは電気工具を持っていなかったことが出発点ですが、創作を進めるうちに、電気がなくてもいつでも創作活動を行うことができる手工道具の良さを実感し、手工道具にこだわるようになりました。

そこには、アートの魅力のひとつとして、目の前の課題を創意工夫を以って解決するというアーティストの姿勢があります。

作家プロフィール

Utai Nopsiri
1970年生 タイ中部 チャチューンサオ県出身

Graduated Master Degree from Slipakorn University
Lives and works at Nakornphrathom Province

Exhibitions
2006
Krung Thai Bank Award, 52nd National Exhibition of Art, Bangkok (2nd Price)
2005
51st National Exhibition of Art, Bangkok
2000
47th-50th National Exhibition of Art, Bangkok and Group exhibition in Art Project Thai Italian Art Space

文責: neu