ARTISTS
アラティ・アートギャラリー
May 23 - May 27, 2019
ヤンゴンの老舗ギャラリー、アラティ・アートギャラリーで2019年5月23日から27日まで、ベテラン画家のマウンディ氏の個展が開催された。「アイズ・オブ・インナーマインド・シリーズ」と題して、フクロウをモチーフにした絵画約20点が展示されている。
展示されているのは、フクロウを正面からとらえ、瞳をぎょろっと大きく強調した作品だ。ほぼ同じデザインだが、瞳や背景などのカラーが異なる約20点の作品が並ぶ。マウンディ氏によると、フクロウはミャンマーでは知恵の象徴として縁起のいい鳥とされている。「夜でも目が見えることから、目に見えないものを見るということを示している」と話す。
マウンディ氏のテーマの一つは、「見えないものを見る」ということだ。これは幼少のころに出家をして僧院で暮らしたマウンディ氏の仏教的な世界観に基づいている。目に映るものは本質の一部に過ぎず、目に見えない部分にこそ真実がある。それを見つめる存在としてフクロウを取り上げたのだという。
シンプルな丸みを帯びた四角形の体に、大きな瞳を描き、白のアウトラインで強調する。黒目にあたる部分は正円で描かれ、虚空を感じさせ見る人にプレッシャーを与えている。明るい色彩のコミカルなデザインながらも迫ってくるものがある。
80歳近いマウンディ氏は、ミャンマー美術の大家のひとりだ。絵画のほか、オブジェ、詩など多くの分野で活躍している。ただ有名になったあとでも自分の作品の価格が高騰して、庶民の手に入らなくなることを嫌う。20枚もの同じフクロウの構図の作品を描くのも、多くの人に手を取ってほしいという思いからだ。米国の著名イラストレーターが作品の価格高騰を防ぐために、印刷した安い作品を売り出した例を参考にしたという。
マウンディ氏はたびたび瞳をテーマにした作品を発表している。また、社会の矛盾についての作品も多い。天秤をテーマにしたオブジェは、社会の公正を訴えるものだ。人の内面に迫りながらも、社会に対する厳しい目を向ける作者自身の思いにも通じている。今後も、人間と社会に厳しく迫る作品を作っていくのだろう。
マウンディ(Maung Di)
1941年、英領ビルマのマグエ地方の農村に生まれる。絵画を中心としながら、インスタレーションやオブジェ、詩、短編小説なども手掛ける。仏教的な人間の内面を見つめる思想と、現代社会への批判を組み合わせた作風で知られる。