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ミッチーナ市 初の絵画展示会 カチン諸民族の表現豊か 地元の作家を紹介

Myanmar

Apr 02 - Apr 05, 2019

ミャンマー北部カチン州の州都ミッチーナのマノー公園で4月2日から5日、カチン文化協会芸術委員会が主催する絵画展が開かれた。主催側によると、ギャラリーなど絵画を展示する場所が少ないミッチーナではこれまで本格的な絵画展を開催した記録はなく、初のイベントになるという。公園のホールには地元の画家を中心とした約10人の地元アーティストに加え、ヤンゴンや海外の画家も含めて計約100点の作品が展示された。

 絵画展の主導的な役割を果たしたのはカチンの著名芸術家として知られるエンコン・ブラン氏ら。カチン文化協会の芸術委員会が主催した。地元の芸能人など多くの名士が協力し、ミッチーナの一大イベントとなった。会場では、カチン州に住む少数民族の暮らしや、民族の伝統的なモチーフを表現した作品が多く展示された。

同公園のモニュメントをデザインしたことで知られるエンコン・ブラン氏はアクリル画など60点余りを出品した。展示会の関係者によると、ミッチーナでは同氏のような著名画家が自分のアトリエ兼ギャラリーを持っているケースはあるものの、絵画の取扱業者も少なく流通経路が限られていているという。この美術展はこうした状況を打破し、若手画家のためのより大きな発表の場を作ることを目的としている。

 エンコン・ブラン氏は幅広い作風の作品を描くが、やはりカチンの伝統をモチーフにしたものが多い。音楽を奏でる女性が特徴的だ。女性は必ずしも若くない奏者をクローズアップし、熟練の技の魅力がキャンバスに引き立つように仕上げている。

そのほか、民族の生活を表現した作品も多くみられる。カチン族はミャンマーの北部に住む山岳民族だ。ひとくくりにカチン族と言っても、ジンポーやローウォ、リスなどのサブグループに分かれており、多様性が高い。過酷な環境で働く鉱山労働者を描いた作品からは男らしさがあふれ出ている一方で、カチンの民族衣装に身を包んだ伝統的な女性を描いた絵画も多い。たばこの煙をくゆらせる高貴な人物を描いた作品も見受けられる。

レモングラスの藪の中を歩く新婚の男女を描いた作品はは、カチンの民族の伝承に基づいている。カチンの諸民族がキリスト教に改宗する以前の精霊信仰では、女性は竜の化身とされていた。その竜である女性を災いから清めるために、レモングラスの香りが用いられるという。

このほか、民族衣装をデフォルメしてイラスト風に描いた作品もある。歌や踊りというハレの日にちなんだもののほか、子どもを背負う母親など農村部の日常風景を切り取った作品もみられた。

授乳のために胸をはだけさせた女性を描いたものも見られた。地元の画家のゾーミンテイン氏は、ミャンマーではまだ珍しい裸婦をテーマにした作品も出品している。この地方では初の絵画展とあって、幅広い作家の作品が集まっている。

会場では複数の作家によるライブペインティングも行われた。描かれたのは、カチン州の景勝地で、中国の援助によるダムの建設が議論されているミッソンの風景。ある画家は「これを描くことでミッソンの自然の美しさを表現し、地元住民の(ダム建設に反対する)意思を伝えたい」と話していた。

エンコン・ブラン氏も展示会場で筆を執り、カチン州でも人気のあるアウンサンスーチー国家顧問の肖像画を描き上げるパフォーマンスも披露した。

現在、カチン州には若く力のある作家が育ってきていると言い、あるアーティストの一人は「こうした展示会を通してカチンの芸術を盛り上げていきたい」と話していた。展示会には米国人アーティストも参加。カチン州のアーティストが、より広い世界で活躍するきっかけとなることが期待されている。

Information

開催期間
2019年4月2日〜5日
会 場
マノー公園ホール(カチン州ミッチーナ)

文責: Yuki Kitazumi