Exhibitions
The Secretariat
ミャンマー最大都市・ヤンゴンの最南部に広がるダウンタウンのミドルブロックに、広大なセクレタリアットオフィス(ミニスターズオフィス)は建っている。イギリス人建築家により設計され、かつてはビルマ総督府や政府庁舎として利用されたこの建物で、現代アートイベント「コンセプト・ コンテキスト・ コンテステイション」が開催された。
入口付近には女性がマスターを務める交流の場が
2019年1月19日〜2月10日の3週間行われた同イベント。ミャンマーと東南アジアの各国からコンテンポラリーアート作家が集まり、この歴史的建造物を一棟まるごとを使って、インスタレーションや映像など多種多様なアート作品が詰まった展覧会を作り上げた。
現代アートの定義は非常に難しいが、少なくとも「伝統的・古典的ではない」アートとして扱えるだろう。そういった意味で、このイベントはまさにミャンマー・東南アジアの現代アートが集結していた。
シンガポールのリーウィン氏は、日本人にも馴染みの深いスポーツ・卓球に芸術を見出したようだ。彼は通常の長方形とはまったく異なる、円形の大きな卓球台を創りだした。卓球台の中心には人が動けるスペースが空いており、ラケットとボールも用意されているため、円の中心対円の外側で実際にプレイすることが出来る。アートとスポーツを両立させた、五感で楽しむ新しい芸術だ。
映像作品においても、型にはまらないのは同じだ。壁で区切られたスペースに生まれる暗闇を利用したアートでは、壁に映し出された映像が順番に切り替わるだけなのだが、映されるのはモザイクがかった画面に人名らしき言葉が淡々と書いてあるのみ。ガシャン、ガシャンという音とともに切り替わる映像が印象に残る。
そのほか、ミャンマーの伝統衣装である巻きスカート・ロンジーや、人々の生活スペースを黒一色で表現したバンブーハウスなど、ミャンマーの文化を体験できるような作品も見られた。木や竹で作られた楽器を駆使し、音楽を奏でながら会場内を練り歩く一団もおり、アーティストも様々だ。
現代アートには非常に強いメッセージ性を持つ作品が存在する。インドネシアの作家・FX ハーソン氏による作品も、その一つではないだろうか。
イベントパンフレットにも使用された同作品は、濃淡鮮やかなピンク色のクラッカーから作られたピストルを大量に積み上げたもので、机上の墨には割れたピストルも置かれていた。ピストルとクラッカーというまったく用途の異なるものを、作家はいかにして融合したのか、考えてみるのもいいだろう。
人物のポスターに書き込みをした、わかりやすい社会風刺の意味を持つ作品もあった。一方で、白砂の上におしゃぶりを付けたコーラのペットボトル、汚職や死んだ犬の匂いを詰めた瓶など、見る人に解釈を委ねるような作品も多い。しかしどのアートでも、そこに込められた作家のメッセージを自由に受け止められるのが、現代アートの魅力である。