Exhibitions

Pichai Pongsasaovapark 個展「A Disproportionate Burden」 – SAC Gallery

Thai

SAC Gallery

Aug 07 - Oct 22, 2021

Under Pressure, 2021, Art performance with steamroller Variable size
A Disproportionate Burden #33, 2021, Installation with Cement Rod, Printing Ink on Canvas, 200 x 1000 cm / each
All images courtesy of SAC Gallery

タイでは労働者の30%以上が農業に従事しており、タイの経済は農業に大きく依存している。近代化に伴い、農場は、機械化、技術化、グローバル化などの構造的変化を遂げ、世界市場の需要に応えようとしている。タイに輸入され使用されている農薬の数は、10年経つごとに増加している。タイの農家は、耕作可能な土地を拡大するだけでなく、農業においてより多くの化学薬品を使用することで、作物の収量を増やし、より高い生産性を求める市場の要求に応えなければならなかった。発展途上国であるタイでは、農薬の使用は必須であるが、農薬の使用過多や農薬に対する規制の不備は、農家やその家族、そして一般の人々に健康被害をもたらしている。

バンコクを拠点に活動するアーティスト、ピチャイ・ポンササオバパーク(Pichai Pongsasaovapark)は、大気汚染がタイの人々に与えた健康への影響を探っている。彼の作品は、大気汚染や社会における汚染問題をテーマにしたものとして知られている。今回は、特に北部のチェンライ県とメーホンソーン県の地元の人々を中心に、この土地の健康状態を調査し、農家の人々に直接インタビューを行った。

  • A Disproportionate Burden #5, 2021, Botanicals and Oil on Mulberry Paper, 26.5 x 40 cm

  • A Disproportionate Burden #8, 2021, Botanicals and Oil on Mulberry Paper, 26.5 x 40 cm

  • A Disproportionate Burden #12, 2021, Botanicals and Acrylic on Mulberry Paper, 60 x 80 cm

  • A Disproportionate Burden #18, 2021, Mix Media on Mulberry Paper, 60 x 80 cm

ピチャイ氏は、消費者が求めているであろう、最高かつ最も美しい作物を育て産み出し、かつ栽培から販売までの期間を短くしなければならないという、農家が晒されているプレッシャーを目の当たりにして、心動かされた。広範に行われている除草剤や殺虫剤などの農薬の使用や、土の入れ替わりを早めるための焼き畑などは、農家にとっては、現在の市場で競争するために必要な害悪だと考えられている。

  • A Disproportionate Burden #13, 2021, Botanicals and Acrylic on Canvas, 103 x 195 cm

  • A Disproportionate Burden #15, 2021, Botanicals and Acrylic on Canvas, 108 x 195 cm

  • A Disproportionate Burden #14, 2021, Botanicals and Acrylic on Canvas, 108 x 195 cm

  • A Disproportionate Burden #25, 2021, Mix media collage with printing ink on newspaper, 84x100cm

  • A Disproportionate Burden #30, 2021, Mix media collage with printing ink on newspaper, 80x60cm

SAC ギャラリーで開催された今回の展覧会「A Disproportionate Burden」(不均衡な負担)では、ピチャイ氏は、今までにはなかった芸術的手法を用いて表面の質感を創り上げるというアプローチを続けている。彼の作品は、肉眼では見えない現実と現在の危険を具体的な方法で捉えており、実際には、「見えないものはあなたを傷つけることができる」と言っている。これまでの「Poison Flower」や「Deluge」シリーズでは排気管を使用していたが、今回のシリーズでは蒸気ローラーを使用し、花や野菜、コーヒー豆、サトウキビなどを押し潰している。農家の人たちが私たちのために育ててくれた美しくて健康的な野菜を、蒸気で平らにすることで、現代の農業生産に使われている化学物質の危険性を形にしようとしている。ピチャイ氏の作品は、農家が農業生産量を増やさなければならないというプレッシャーを表現している。印刷の形態としての蒸気ローラーの使用は、違法品や偽造品の破壊も象徴しており、輸入された外国製品を守る決意を表している。また、このシリーズでは、別の印刷形態である新聞を利用し、ピチャイ氏は、新聞の株式ページを強調することで、経済が農薬の過剰使用を後押ししていることを表現している。
 
自身のキャリアの中で、彼は、アクリル、ミクストメディア、写真を用いて、抽象的でコンセプチュアルな作品を制作してきた。今回のシリーズでは、アルギ系化学物質の使用もプロセスに導入している。これらの作品の画面の質感からは、有毒な化学物質に曝されたときに人間にもたらす痛みの深さが伝わってくる。この点に注目するために、ピチャイ氏は作品の質感を作る際に、自らも化学物質に触れた。社会向上のために化学物質の使用を余儀なくされている人々の気持ちや痛みを理解したいと熱望したのだ。その過程で体調を崩した彼は、誰一人として安全ではなく、また、良かれと思ってやったことが思わぬ結果を招くことがあると実感したのだ。 その結果としての作品上には、農家と消費者双方にとっての危険性が潜んでおり、10トンの鉄製ホイールを使用した蒸気ローラーは、農家が競争力を維持し、国際市場の要求に応えるために農薬を使用しなければならないというプレッシャーを想起させる。
 
いかなる社会においても農薬やその健康への影響から完全に守られているわけではないが、タイのような発展途上国の人々には過度にその負担が掛かっている。

  • A Disproportionate Burden #24, 2021, Charcoal, Acrylic and Oil on Canvas, 110 x 150 cm

  • A Disproportionate Burden #32, 2021, Mix Media Collage with Printing Ink on Newspaper, 60 x 80 cm

アーティストについて

  • Pichai Pongsasaovapark

Pichai Pongsasaovapark(1963年、タイ・ハットヤイ生まれ)
バンコクを拠点に活動するアーティストで、アクリル、ミクストメディア、写真などを用いて、抽象的でコンセプチュアルな作品を制作する。
バンコクのSACギャラリーの代表を務め、作品はルチアーノ・ベネトン財団Luciano Benetton Foundation(イタリア・ミラノ)、米国国立衛生研究所National Institutes of Health(ワシントンDC)、国連the United Nations(タイ・バンコク)など、多くの公的・私的コレクションに収蔵されており、画期的な大型書籍である『Thailand:Spiritual & Material - Contemporary Artists from Thailand」(2015年)に収録されている。

Information

A Disproportionate Burden

開催期間
2021年8月7日〜10月22日
会 場
SAC Gallery at Art Centre Bldg., 3rd floor SAC Gallery, Bangkok
160/3 Soi Sukhumvit 39, Khlong Toei Nuea, Watthana, Bangkok 10110 THAILAND
電 話
+662 662 0299, +662 258 5580 ext. 401.
営業時間
火 – 土 午前10時 – 午後6時 日曜日(予約制) 休業:月曜日、祝日
URL
https://www.sac.gallery/exhibitions/a-disproportionate-burden/

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団