Exhibitions
Gallery VER
Nov 07 - Dec 25, 2020
All images courtesy of Gallery VER
「私は壁に絵を飾った。そして私はそこに壁があることを忘れてしまった。」
ーージョルジュ・ペレック
空間は、私たちの視線を捕らえるものによって感じられます。ペレックは『Species of Spaces』 の中で、慣れ親しんだ生活空間と私たちがそれを認識する方法を描き、人々が管理・経験する空間について議論しています。空間とは、日常生活に関する考察における重要な一要素であり、自然や宇宙の真実を指すだけでなく、しばしば、ある種のメタファーとして機能します。不確実性と 崩壊がほとんど日常となってしまった年に、私たち人間は圧縮された空間によってどう形作られているのでしょうか?
「Willing Suspension of Disbelief」という言葉は、楽しみのためにそれを信じられるように、サイエンスフィクションやその他の思索的作品といった超現実なものの考察に当たって、クリティカル・シンキングや論理を故意に避けることです。いくつかのサイエンス・フィクションの中の建築物や人工物、また同じくそこに暮らすもののために作られたものと、その中にある緊張に興味を惹かれた Sathit Sattarasart は、本展覧会で「space」の活性化を試みます。「space」という言葉は、極めてポストモダンな分野でのリングワ・フランカ(共通語)となってきました。その言及の性質は、極めて柔軟であり、しばしば閃きや期待を表しています。
「Willing Suspension of Disbelief」は、自由空間、追放された機能、リズム、習慣、そして展覧会としての必要性です。そびえ立つねじれた構造物(sp/n とのコラボレーション作品)は、壁のない部屋、一切の仕切りのない空間、指示の書かれた広がりで構築された、ギャラリー空間の中央を占拠します。人々よりも良く家に住み着く猫たち(Karin Phisolyabut とのコラボレーション作品)は、彼らのお気に入りの隅っこにいます。さらにゲストアーティストの Jens Pecho、 Pratchaya Phinthong、Pathompon Mont Tesprateep も、Sathit Sattarasart によって作られた台座やフレームにその作品を展示予定です。
展覧会での展示についての微妙な状況については熟議がなされました。私たちが置かれている社会的現実の鏡として、展覧会は進行中の実現性にトライします。本展は観客に、私たちを取り巻くものについて再考を促します。与えられた空間から離れ、その空間の単なる使用者というより所有者の一人として、今から私たちは何ができるでしょうか? 私たちの世代の底はどこにあるのでしょうか? 私たちはどうやって前進し、集団的無益さと自己転換に向き合えるでしょうか?
作家のドイツでの10年に渡る研究と暮らしの後、バンコクでの初単独調査となる「Willing Suspension of Disbelief」展で、Sathit Sattarasartは個展作家としての特権を広げ、この状況の構築に参加する観客とともに、招聘した友人たちと「space」を共有・発展させながら、母国での新しい物語の再構築を試みます。
コラボレーション:
Irin Siriwattanagul、Nathaphon Phantounarakul、Karin Phisolyabut
ゲストアーティスト:
Jens Pecho、Pratchaya Phinthong、Pathompon Tesprateep
ゲストライター: (future release publication)
Nok Paksanavin、Phonpiti Tansuwansophon、Pitiphon Tansuwansophon ほか
共同キュレーション:
Cathleen Siming Pan
アジアとヨーロッパを拠点に活動する Sathit Sattarasart (1979年生まれ)は、彫刻からビデオまで、マルチプラットフォームな実践を行うビジュアル・アーティストです。Sattarasart の作品は、アーティスティックかつソーシャリー・エンゲイジドな様々な主題を扱い、しばしばその社会的、 状況的、そして「日常生活」の筋書きの中で「物事がどうなっていくのか」をたどります。彼はしばしば、強調と批評的潜在力を用いて、社会と多様な美術界におけるアーティストの役割や、制度 批判、美術作家、枠組み、制作、といった、美術に関する主題に目を向けています。
Sattarasart は Staatliche Hochschule für Bildende Künste Städelschule のマイスターシューラー課程を卒業し、そこで彼は高名な教授であり彫刻家・芸術家であるTobias Rehberger のクラスで学びました。Sattarasart の作品は、韓国の国立現代美術館(MMCA)、バンコク芸術文化セン ター、フランクフルト現代美術館、カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センターでの国 際展に出展されました。彼は、初開催となったバンコクビエンナーレ(2018)、Art Berlin Contemporary(2010)、釡山ビエンナーレ(2006)、シンガポール Asian Contemporary Art Week(2006)などの主要な現代芸術祭・ビエンナーレに参加しています。