Exhibitions
Tang Contemporary Art Bangkok
Oct 29 - Dec 10, 2020
Zodiac (Edition of 10+2AP), LEGO bricks, Set of 12 each 115 x 115 cm, 2018, Courtesy of Ai Weiwei Studio
All images courtesy of Tang Contemporary Art Bangkok
Tang Contemporary Art は、アイ・ウェイウェイ個展「Year of the Rat」を開催します。Cui Cancan によるキュレーションで、北京での個展「Ai Weiwei」、香港での「Wooden Ball」「Refutation」に続きTang Contemporary Art での四回目となる個展です。「Year of the Rat」展はまた、アイ・ウェイウェイのタイ初個展でもあります。
Poster
2020年は中国暦の子年、干支周期では庚子にあたります。鼠は、十二生肖のうち最初の動物です。
歴史的に庚子の年は平常とはかけ離れた年です。1984年は第一次アヘン戦争が起こり、これに続く紛争と変化はさらなる変革の前兆となりました。1900年には、義和団が教会を焼き宣教師や一般信徒を虐殺し、西太后が英・米・仏・露・独・日・伊・豪に対し宣戦を布告しました。8月には、八カ国連合軍が北京を占領しました。60年前の1960年には、中国は大飢饉の只中にありました。その年、「右派」詩人である艾青(アイ・チン)は新疆ウイグル自治区石河子市の新疆生産建設兵団第八師師団に送られ、アイ・ウェイウェイは16年間父とともにその地で暮らしました。
2020年もまた庚子の年です。中国旧正月の大晦日、武漢は新型コロナウイルスによる都市封鎖を発表しました。数ヶ月後には世界中で何千万もの人々が Covid-19 に感染しました。広大な人類文明の中で60年はそう長い時間ではありませんが、大多数の人にとっては生涯に一度しか、子年に当たることはないでしょう。
子年と庚子の年は、アイ・ウェイウェイの展覧会に特別な意味を与えます。子年に関する両義性と忠告は周期的に動きます。100年の間に、時間、空間、分脈、歴史の新しい経験が生まれるのです。
(part)
Zodiac (Edition of 10+2AP), LEGO bricks, Set of 12 each 115 x 115 cm, 2018, Courtesy of Ai Weiwei Studio
(part)
Zodiac (Edition of 10+2AP), LEGO bricks, Set of 12 each 115 x 115 cm, 2018, Courtesy of Ai Weiwei Studio
「Year of the Rat」展は、十二支の獣首銅像で始まり、展覧会全体の歴史的背景となっています。このシリーズは、ともによく知られているが明らかに異なる歴史時代に支えられた、アイ・ウェイウェイの身近なモチーフの二つ、獣首銅像とレゴを融合させます。アイの十二のレゴ作品は十二支頭循環を拡張させたもので、それはかつて順番に円明園に飾られた十二生肖獣首銅像に由来するものです。そのオリジナル作品は1860年英仏軍によって円明園から奪われ、結果として世界中に散り散りになりました。そのいくつかは収集され、北京に戻りました。中国の人々にとって、これらの獣首銅像は100年にわたる屈辱の象徴であり、愛国的プライドと怒りを刺激し続けています。
ヨーロッパのイエズス会によって作られ満州帝国に献上されたこれらの彫刻は、どのようにして中国の象徴となったのでしょうか? 満州、漢、ヨーロッパの人々と戦争による略奪という複雑な起源から、その返還がどのようにして愛国的行為となったのでしょうか? アイ・ウェイウェイはその政治的意味を鋭く認識し、これらの獣首銅像のレプリカを作り、パブリックアート作品として40以上の西欧諸国で大々的に展示し、困惑を呼ぶ歴史の一部分を型取り模倣することで、この歴史時代の記憶について述べています。
アイ・ウェイウェイは新しいテンポラル法で歴史を切り抜け、異なる物語と出来事を繋ぎます。「Year of the Rat」展では、これらの十二支の頭部は、東西の、挑発と適応の、前進と後退の、栄光と屈辱の、180年間を象徴しています。いくつかの干支周期ののち、これらの関係性は浸透し、変化し、互いにろ過し続け、全てが複雑に濁ってきました。しかし2020年はパンデミックにより、この物語はさらに複雑で不安定になっています。先の見えない子年です。
何年にもわたる調査結果であろうと瞬間の土産物であろうと、アイ・ウェイウェイは物語を語るために彼独自の方法論と質感を作り出します。その表現は主題をさらに高め、その表現方法はその物語や歴史の一部にとてつもない美しさを与えます。それは社会的意識への鋭い洞察を表していますが、またそれは優れた職人技によって完璧に裏打ちされてもいます。マーティン・スコセッシのニューヨークや、フェデリコ・フェリーニの『8 1/2』のように、自己と現実、そして夢が上昇し、混じり合います。
Ring M
Size:26.67 x 30.28 x 18.63(H)mm
Medium:Metal
2018
Courtesy of Ai Weiwei Studio
Ring W
Size:25.83 x 28.87 x 16.64 (H)mm
Medium:Metal
2018
Courtesy of Ai Weiwei Studio
ギャラリーの中央には、純金製で作られた指輪「Ring W」と「Ring M」が置かれています。この指輪は男性、女性専用で、それぞれが着用できるものです。指輪に描かれた図像は、閉じ込められ、奪われた感情、また自分自身の存在を決定する自由と能力についての、アイの思想を反映しています。作品の解説文には「ウェアラブルなこの作品は、一方に養育と優しさの力を、しかしまた一方には破壊と冷酷さを持つ、人間性の二重性についてのアイ・ウェイウェイの感受性を表現したものです」とあります。指輪の表面中央には、ミステリアスな半月の下に広がる移民の物語が描かれています。歩いたり、海を渡って、あるものはだれかと一緒に、あるものはたった一人で旅をする姿が描かれています。アイ・ウェイウェイの特徴である象徴主義は、現代社会の象徴的なイメージとともに、彼らの旅路にドラマチックな文脈を与えます。この宝石の力強さは線の優雅さ、細部の純粋さ、そして人間性への共感能力にあります。
この指輪は、二つの古代文明からインスピレーションを受けたものです。古代エジプトのヒエログリフと古代ギリシャの金細工技術が、文明がどのように変化し人々がどのように移動するのかについてのアイのリサーチに結び付けられました。動物の頭部が前世紀に味わった多くの変化に密接に関連するものとして、アイ・ウェイウェイのドキュメンタリー作品『Human Flow』では、何百万人もの人々がどのようにして家を失い移民となったかを記録しています。このプロジェクトは、彼自身の経験からインスピレーションを得たものです。生まれた時から、彼は北部の大荒野から新疆ウイグル自治区へ、北京へ、そしてニューヨーク、ベルリン、ケンブリッジへと移動をしているのです。
The Defacing Marks of Colored Pigment Thrown onto Mao Zedong’s Portrait in May 1989, Tiananmen Square
Size:231 x 308 cm
Medium:LEGO bricks
2019
Courtesy of Ai Weiwei Studio and Lisson Gallery
The Navigation Route of the Sea Watch 3 Migrant Rescue Vessel, June 2019
Size:308 x 308 cm
Medium:LEGO bricks
2019
Courtesy of Ai Weiwei Studio
作品「The Defacing Marks of Colored Pigment Thrown onto Mao Zedong’s Portrait in May 1989, Tiananmen Square(1989年5月の天安門広場の毛沢東の肖像画に描かれた落書き)」と、「The Navigation Route of the Sea Watch 3 Migrant Rescue Vessel, June 2019(2019年6月の移民救助船の航路)」には、美学的関連性は何もないように見えます。これらのミニマルで、抽象的な線は、挑発的行為と思いがけない結末を伝えています。海上の数え切れないほどの移民は、海岸に漂い、完全に孤立して無力です。私たちが情報の表面下に飛び込む事で初めて意識レベルの思考をもたらし、歴史と証拠、物語と形式の間の関係の中にある数え切れない命を知ることができ、私たちは歴史の中に本当に起こっていること、またその意味を明らかにすることができるのです。
Revolt, Unique (From a total production of 3 works)
Size:48 x 48 x 80(h) cm
Medium:Marble
2019
Courtesy of Ai Weiwei Studio
Shelter, Unique (From a total production of 2 works)
Size:95 x 69 x 73 cm
Medium:Marble
2014
Courtesy of Ai Weiwei Studio
歴史はいつも忘れられ、過去の苦しみはいつも弁済されます。特定の時代や場所の物語は消えていきますが、この歴史的精神の形は永遠であることを示しています。歴史的な出来事がどんなに重要であろうと、それは完全に表現されることはありません。その代わり、それは異なる分脈の中で様々な形で現れます。不完全な情報と偶然の結果は、歴史の長い道のりの中で主観を欠いた部分的な断片となります。例えば、アイ・ウェイウェイが長く使用してきたレゴブロックの特性や状況は、完璧な出来事や歴史を正確に集めるために、私たちはたくさんのブロックと幅広い考え方と道具を使うべきだと決定づけます。私たちは問わなければいけません、「これはなんだ? 何が起こっている? なぜ今日はこうなんだ?」と。
「子年」は新しい周期の始まりであり、古代の伝説では、悪を防ぎ、結婚の縁起を決め、霊を召喚してくれるものです。現代用語では、それは不浄、盗み、病の広がりを象徴します。2020年、庚子の年は、いつもよりも長い「第四うるう年」の年であり、旧暦では384日になります。このパンデミック下で、多くの人が生きて今年の終わりを見ることができず、彼らが経験した事柄は、180年間のうちで繰り返し語られ、彼らを来るべき事柄の先駆者へと変えるのかもしれません。
キュレーター:Cui Cancan
Ai Weiwei
Ai Weiwei
1957年、中国・北京生まれ。
中国現代美術家であり活動家。アイは2008年オリンピックのための北京国立スタジアムの芸術顧問として、スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンと協働しました。政治活動家としては、中国政府の民主主義および人権に対する立場に強く率直な批判をしてきました。特に、2008年の四川大地震でのいわゆる「おから学校」の倒壊に始まる四川学校汚職事件について、政府の汚職や隠蔽を調査してきました。2011年には、4月3日、北京首都国際空港での逮捕ののち、当局より「経済犯罪」という容疑で、正式な手続きなしに81日間の拘束を受けました。
Cui Cancan
Cui Cancan
中国のインディペンデント・キュレーターとして、中国現代美術賞批評家賞、Yi Shu 批評賞などを受賞。キュレーターを務めた主な展覧会に、「Hei Qiao Night Way」(2013)、「Xiang Cun Xi jian Chui」(2013)、「FUCKOFF II」(2013)、「Unlived by What is Seen」(2014)、「Between the 5th and 6th Ring Road in Beijing」(2015)、「The Decameron」(2016)など。個展として、アイウェイウェイ、Xia Xiaowan、Shen Shaomin、Wang Qingsong、He Yunchang、Xiao Yu、Qin Ga, Xie Nanxing、Shi Jinsong、Li Zhanyang、Xu Zhongmin、Ma Ke、Xia xing、Zhao Zhao、Li Qing、Chen Yufan、Chen Yujun、Li Binyuan、Feng Lin、Zhang Yue、Zong Ning、Jiang Bo などのキュレーションを務める。