ARTISTS

立体、映像、ヒップホップによる権威への疑問提起 カタ・サンケー

Kata Sangkhae
Thai

1976年バンコク生まれのカタ・サンケーはバンコク大学美術学部で視覚芸術の学士号を取得し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の彫刻分野において修士号を取得。その後オーストラリアのRMIT大学で博士号を取得し、現在はバンコク大学で教鞭を執っています。様々な国での生活を体験したコンテンポラリーアーティストとしての感性は、視覚だけでなく音楽も含んだ多様な表現において発揮されています。場所や環境の変化に起因する社会の政治的な問題についての作品を制作するカタ・サンケーについてご紹介します。

様々な国からのインスピレーション

アメリカ、オーストラリアと二つの国で芸術を学んだカタ・サンケーは、それぞれの国について違った印象を持ったようです。アメリカについては、ムービーのようなエンターテインメント性を感じ刺激を受けました。

特定のキャラクターが直面しなければならない問題や感情を理解するために他人の役割を演じる、という彼独特のユニークな手法に取り入れられたのがオーストラリアの無法者ネッド・ケリーでした。抑圧に立ち向かう無法者のように行動し、感じようとするなら、私たちはその立場を理解して社会的不平等に立ち向かうことができるかもしれません。

これらの環境は、母国タイに戻った後も、様々な感情を表現する彼の作品を生み出す土壌となっています。

本当に私たちをコントロールしているのは誰か?

カタ・サンケーは作品を通じ権威に対して激しく疑問を投げかけます。現在のタイは以前のように頻繁な暴動や集会が起きるわけではありません。 彼はタイが一つの段階を終えたと語ります。
彼の作品は、複雑なパターンの虐待、愛と思いやりの行為らしきものの下に隠された微かな暴力、身体的および精神的な傷を残す虐待を明らかにし関与する傾向があります。古代では、私たちは拳、剣、さらには銃で戦い、敵の体を傷つけました。それでも、お互いの戦術と名誉には相互に敬意が払われていましたが、この資本主義独裁社会では、人々はより複雑な武器でお互いを傷つけ、名誉や誠実さなしに人生の多くの局面で傷を負う事になります。

彼の芸術をよりシリアスに解釈するとしたら、愛と人間関係において、「本当に私たちをコントロールしているのは誰か?」という問いが聞こえてきそうです。

カタ・サンケーの作品世界

人生の各段階において心に影響を与えたり邪魔したりする外的要因と内的要因があります。カタ・サンケーの作品は立体、映像、音楽などによって様々な感情を表現します。

彼の作品に度々登場する心臓のオブジェ。心臓の鼓動で私たちは誕生と死、自由と独裁、至福と暴力を抱き寄せます。

バンコクビエンナーレ2018では“Companion Hands”というボディランゲージをインスタレーション作品に落とし込んだ作品が出展されました。弾丸の箱がプラットホームになっており、同じく彼の作品に出てくる手で作ったハートは幸福と悲しみの両方を意味するシンボルです。

彼の活動の一つに、ヒップホップミュージックの制作があります。ラップは彼にとって個人的な危機からの癒やしとなっており、個人と社会の両方における力強い声明なのです。
彼のヒップホッププロジェクト「SK secret killer」の“Kill Dragon”は、幼い王が竜退治をすべく成長を待っているという内容の曲です。

Kill Dragon by SK secret killer and Brandnewdon & Norasarnti ( feat. Dajim Rap Thai) 2019
https://www.youtube.com/watch?v=fzkxufUmM7E

映像作品

Red man swimming
https://www.youtube.com/watch?time_continue=100&v=mXSNnp7ZVbc&feature=emb_title

Little Kata (zuma1)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=52&v=yWztoeuRVBc&feature=emb_title

waiting for butterfly
https://www.youtube.com/watch?time_continue=107&v=YSOmFlBYCeE&feature=emb_title

作家プロフィール

Kata Sangkhae
1976年生 タイ

Education

Bangkok University, Bachelor of Fine and Applied Arts, 1998
University of California in Los Angeles, Master of Fine Arts, 2002
Royal Melbourne Institute of Technology University, Doctor of Philosophy, 2016



受賞歴
2012 Doctor of Philosophy Scholarship by Bangkok University
2002 The D’ Arcy Hayman Award
2000 Master of Fine Arts scholarship by Bangkok University
1998 (The prize), “The New Expression in Thai Contemporary Art” The collaboration between a group of Japanese artists and the Department of art Theory, Silpakorn University, The gallery of the Faculty of Painting, Sculpture and Graphic Arts, Bangkok


個展
2015 “Who Are We?”, Dark Horse Gallery,Melbourne
2010 “Ghost Identity”, Koi Art Gallery, Bangkok
2004 “Everest”, About Studio/ About Café, Bangkok
2000 “You are here”, Bangkok University Art gallery, Bangkok
1999 “Water room project”, Wong Wien 22, Bangkok


文責: neu