COLLECTIONS

縁々 / En-en

Edition 1/5+AP

Japan
太田 光海 / Akimi Ota

En-en, 2021, Single Channel 4K Video, 14min 8sec
All images courtesy of the artist

「縁々」は、ヴィジュアル・アート、ドキュメンタリー、そして感覚民族誌の結節点に位置する実験的映像作品である。本作は、隆々とした溶岩を含む海岸や緑深き森に囲まれ、かつてリゾート地として人気を博した街である熱海で全編が撮影され、この街がはらむ諸存在による根源的縺れを捉えようとする。この街のアイコンである旧ホテル・ニューアカオに50年以上努めている庭師の男性が、ホテルが運営する植物園「ハーブ・ガーデン」を野生動物から守る様子を記録する一方、本作はその映像を波打つ海中や地上の植物を捉えた高度に触覚的なイメージと並置し、目まぐるしく行き来する。それにより、人間、動物、そして他の諸存在がある種の捕食関係を通して共存している熱海の現実を、メタファーの次元で喚起する。

アーティストについて

太田 光海 / Akimi Ota は、東京を拠点にする映画監督、人類学者、視覚芸術家。 止めどなく複雑化する世界において「他性」を自らに取り込むことの可能性について、映像、写真、サウンド、テキストを用いて表現する。特に、人々が己の生を取り巻く環境との関係性を変容させるあり方や、人間、植物、動物、その他の諸存在が歴史的に構築してきた緊張がそれらに影響を与える様に関心を持ち、従来の分類的思考を侵犯する知覚の可能性を提示する。エクアドルのアマゾン熱帯雨林に住むシュアールの人々を映し出した監督作『カナルタ 螺旋状の夢』は、世界各国の映画祭で評価され、リスボン、キト、ベオグラードなどで上映され、2021年より日本全国で劇場公開された。また、令和4年度の文化庁映画賞文化記録映画部門優秀賞を受賞した。個展「Wakan: Soul Is Film」 (2021, The 5th Floor)や「Alive in Dreams」 (2022, BnA Kyoto)では、ビデオインスタレーションや写真、サウンドを用いて「映画」の文脈では見落とされがちなナラティヴ的周縁性に実験的に取り組んだ。

  • Akimi Ota

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団