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i:cat gallery – “Place of Trying Arts(アートの実験場)”

Laos

ギャラリー入口

16世紀、ランサン王国時代に建立されたというシームアン寺のすぐ近くに、1軒のギャラリーがあります。2009年開業の、コンテンポラリーアートを中心とした画廊「i:cat gallery」です。オーナーのCatherine O’Brienはオーストラリア出身。ラオスには2004年から滞在しています。当時、オーストラリアがアジア各国で行なっていた芸術教育支援のプロジェクトメンバーとして、ラオスを訪れたのがきっかけです。

その際に、今はなきギャラリー “Treasure of Asia”と出会ったことが彼女の人生の転換点となりました。展示されていたアジアのコンテンポラリーアートの素晴らしさに心を打たれました。
「うまく説明できないけれど、これらは自分の一部だと感じた」。大学では哲学が専攻で、芸術のバックグラウンドはありませんでしたが、とにかく自分も画廊を始めようと、導かれるように開業を決めました。

  • オーナーのCatherine O’Brien。
    「コンテンポラリーアートは自分の一部」

i:cat galleryでは、国内外の様々なコンテンポラリーアーティストの作品展を行なっています。Catherineが見出したラオスのコンテンポラリーアートの魅力は、初見ではわからない隠されたメッセージ性です。他のアジア諸国のアートは、政治批判やジェンダーの平等など社会的なメッセージを直接的に訴えるものが多くあります。一方、一党支配の社会主義国であるラオスでは政治・政党批判はタブーであり、また婉曲的なコミュニケーションを好む国民性も反映されているのでしょう。その間接性に、他国のアートと異なる魅力がある、と言います。

ラオスでの画廊経営は大変のようです。東南アジアの最貧国であるこの国では、ごく一部の富裕層を除いて国民の所得は依然低く、芸術を愛でる、お金を払って芸術品を手に入れるという文化はありません。
敬虔な仏教徒が多く、仏教画や仏具には金銭を惜しまないラオス人は多くいますが、一般的な美術・芸術に対しては多くが関心を持ちません。著作権の概念もなく、芸術は無料で手に入れられるものという考えが一般的です。

  • ギャラリーの2階。ラオスのコンテンポラリーアートの第一人者Olé Viravong Scovillの作品などが展示されている。

  • ギャラリーのアシスタントスタッフで自身もアーティストであるラック。写真の大作は、ラオスの神話をティンカーベル風に表現したもの。

このような環境においてi:cat galleryの役割は何かとCatherineに問うと、しばらく考えた後、「place of trying arts(芸術の実験場)」と答えました。
ギャラリーの目線ではなく、アーティスト達が有機的に繋がり、表現したいことを自由に表現し、感性のままに作品を展示する、そのような場がi:cat galleryです、と。

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団