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ミャンマーの新進作家を動画で紹介 ヤンゴンでアートイベント”Silence is Golden” メコン現代美術振興財団など

Myanmar

Japan Foundation

May 03

世界ではまだ知られていないミャンマーの作家を広く紹介したい――。そんな思いから生まれたアートイベント「サイレンス・イズ・ゴールデン」が5月3日、ヤンゴン日本文化センターで開かれた。メコン現代美術振興財団が発足して初めて手掛ける本格イベントだ。若手キュレーターのアウンミャッテー氏が選んだ10人の芸術家を紹介した。

紹介するのは画家のほか、陶芸家、切り紙作家、パフォーマンスアーティスト、キュレーターら10人で、近年の活動が目立つ作家を集めた。アウンミャッテー氏は「ミャンマー美術は多様性だ。その多様性をなるべく大切にして多くの分野で活躍する作家を選んだ」と話す。10人の作品やキャリアなどを紹介する冊子を作製したほか、会場でインタビュー動画を上映。会場の日本文化センターは100人以上の観衆で満員となった。

イベントでは、紹介された作家らの作品もずらりと展示。女流画家のティンレイヌエ氏の作品では、人間が植物や虫のように変化したようなペン画を紹介した。黒を基調に、首から上が食虫植物のようになっており人間の足をむさぼっている図など不気味な雰囲気を醸し出しながら、人間心理の矛盾を描き出しているようだ。

女性切り紙作家のズンエイピュー氏は、シンプルかつ立体的な広がりを持つ作風が印象的だ。日常生活や労働などのさりげないひとコマを鋭利に切り取っている。今回のイベントでは赤を基調としたコントラストが強い作品を出品した。

紹介された中には、1941年生まれの画家のマウンディ氏や1966年生まれの画家のテインリン氏などベテランも含まれているが、80年代から90年代生まれの若手を多く取り上げている。陶器やガラス細工で生物のパワーを表現するソーユーヌエ氏は1989年生まれ、写真家のチョートゥーバラ氏は1992年生まれだ。こうした20~30代の芸術家が台頭してきていることを示すことも目的のひとつという。このほか、ヤンゴン美術界で活動する画廊「ミャンマート」主宰の米国人ナタリー・ジョンストン氏も取り上げ、ミャンマーで活躍する人材の多様さを見せつけていた。

この日は、振舞われたワインなどを片手に来場者が美術談議に花を咲かせたほか、紹介された10人のうちのひとり、パフォーマンスアーティスト集団「3AM」のメンバーのラット氏が、サプライズの形でパフォーマンスを披露。ノートにワインを垂らしてなめるなどの前衛的な演技で、見る人の驚きを誘っていた。

このイベントを発案したメコン現代美術振興財団の藪本雄登代表理事もあいさつに立ち、ミャンマーで初めて本格的な絵画を購入したエピソードを披露。ミャンマー美術への思い入れがあり、財団の立ち上げイベントをヤンゴンで開催したという。藪本代表理事は「効率的なだけの世界ではなく、美術で豊かな世界を作っていきたい」と力説。今後メコン地域の美術を紹介するウェブサイトを立ち上げるなど、アジア地域の美術の振興のための活動を積極的に展開していく決意を明らかにした。

Information

サイレンス・イズ・ゴールデン

開催期間
2019年5月3日
会 場
Japan Foundation (ヤンゴン日本文化センター)
No.70 Nat Mauk Lane (1), Bahan Township, Yangon, Myanmar
電 話
01430920