COLLECTIONS

黄金の涙滴 / Golden Teardrop

Edition 1/3+1AP

Thai
アリン ルンジャーン / Arin Rungjang

One channel digital video installation, color, sound Edition: 1/3+1AP 
*Including 2 Versions: Japan version with English subtitle and International version with English subtitle 

All images courtesy of the artist

砂糖のしずく、涙のしずく
黄金の涙滴の甘さは、裏切りや不確実性による苦しみを隠匿してきた。現在と絡み合う過去は、小さな物語によって語られる。「Golden Teardrop」は、28分の映像と真鍮の彫刻で構成されている。黄金の涙の塊は、地球に向かって降る雨のようだ。彫刻の支持体等は、19世紀のアユタヤの家屋にあったものだ。

彫刻と動画において、登場する各事象は、その起源を特定することを困難にしている。15世紀の布の糊付けに使われた卵の黄身、17世紀のベンガル人、ポルトガル人、日本人のシャム王国への旅路、さらにはギリシャとヴェネチアの船乗りの冒険とその残酷な結末等である。
 
歴史があたかも一つの容器の中に入り込むように、過去の物語が洪水のように押し寄せてくる。彼らは過去を解き放つように穴を開け、歴史に挑戦するように、層をかき分け、一見孤立した逸話が融合していく。そして、過去、現在、そして将来を認識するために、知識と知覚への欲求を喚起するのだ。
 
時間の引力と圧力は、ポルトガル人の海を渡った商人、16世紀の日本に亡命したカトリック教徒、日本とポルトガルの間で伝来したお菓子のレシピのように、遠く離れた地域の物語を織り交ぜる。かつては貴族しか手に入れることができなかった贅沢な砂糖は、いまや一般の家庭の台所で使われるようになった。

他方、ギリシャ系ヴェネツィア人の船乗りの悲惨な運命を描いた事象は、日本人女性が家族の個人史を語ることによって繰り返される。この反響は、人生を嘲笑したり、進路を妨げたりするものではない。過去はゆっくりとした波紋として現れ、時折、消えていくからだ。
 
その小さな物語達は、沸騰した真鍮の液体を型に流し込んで黄金の涙を形成するように、互いに結合する。実際の涙のように繊細で、金色に覆われている。沸騰した砂糖が入った真鍮の鍋に落とされて固まる卵の黄身のように。

これらの物語は、その起源の懐かしさと好奇心を呼び起こし、多くは歴史の壮大な物語へと拡大していく。この二つの物語にかかる引力と圧力は、二つの物語の間の境界を広げ、一瞬、孤立した物語同士が出会うことを可能とする。
 
真実というものは、事象だけに依存するのではなく、聴衆の声やその他の情報がこれらの物語を最終的に紡いでいくのである。物語と記憶の海に流れ込む小川の流れに浮かんでいるのは、これらの歴史に参画している私達なのだ。

Worathep Akkabootara 2013

  • Thai workers

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団