Exhibitions

アリン・ルンジャーン個展「忘却 / OBLIVION」- Nova Contemporary

Thai

Nova Contemporary

Oct 28, 2021 - Feb 05, 2022

All images courtesy of the artist and Nova Contemporary

Nova Contemporary では、アリン・ルンジャーンの個展が開催される。場所の特性を活かした、サイト・スペシフィックな個展「オブリビオン」(忘却)は、存在の形而上学的なあり方と無の状態、そして内在する欲求と自由との関係を形に表すために、ビデオ、インスタレーション、絵画を組み合わせる。アリン・ルンジャーン(Arin Rungjang)は、ラーマ6世、彼の親族、そして彼自身の記憶を通して、社会的アイデンティティに関係なく、人間の感情の普遍性を反映しながら、新しい関係性に満ちた空間を作り出している。

姉を喪失した中で、個人における自由の強烈な制限は、アリン・ルンジャーンの新しい一連の作品と関連している。これらの経験は、主題/対象、空間/時間、物質/非物質、および感覚/知覚を再構成、および再確立したいというルンジャーンの欲求を駆り立てるのである。「オブリビオン」とは、自己と他者、生成(存在となる過程)、回帰、そしてその支配から脱却することの探求である。

「オブリビオン」では、アリン・ルンジャーンが徹底的な主観を配置し、無を熟考し、物語を昇華させる。彼は歴史的資料を再考し、時間、場所、言語を超えて主要な物語と小さな物語を重ね合わせて、人間の心理的側面を歴史として打ち出すという芸術的実践を展開している。存在のあり方を具体化するために、ルンジャーンは、非視覚的感覚を刺激するために多感覚の対話形成の中で「オブリビオン」を周到に構築している。例えば、彼の亡き姉と鉄鉱石の香水の匂い、絵画の自然な土の質感、抽象的な形態のインスタレーション、そしてピアノを活用した参加型展示でもある。彼は意図的に、物語に静寂を持たせて無を展開し、鑑賞者が彼らの感覚と記憶に囲まれ、想像力が刺激されることを可能にさせるのである。 「オブリビオン」のオープンエンド構造により、鑑賞者は自身の解釈を植え付け、存在のあり方を増強させる。これらの配置を通して、ルンジャーンは恣意的かつ他者のための空間を交渉しようとする。最終的に、鑑賞者は、過去の幻影から解放され、新しい自分への自己生成、自由のプロセスを体験するのだ。

アリン・ルンジャーンは、記憶の重要性と対象の重要性を結び付けるために、「オブリビオン」に色々なメディアを組み込む。それはラーマ6世の手紙、姉の服、金属、絵画、ピアノに見られる。時間と空間を超えて、遠くの事象をまとめることができる彼の対象は、存在論的探求が中心になり、それらは不在/無のアーカイブの存在、現実と記憶間の二元的な関係、残余と失われたものを表している。インスタレーションや絵画では、金属の具体性が人間的欲求の抽象化を例示している。映像作品は、詩的でありながら不安定な存在の真実を探求する彼の一時性を提供するためのルンジャーンの文字通りの行為である。作品にそれとなく埋め込まれている暴力的な強さには、ラーマ6世、そして、芸術家である彼自身、土臭さ、金属的で、苦く、そして甘くもある不思議な記憶が色濃く残っている。

「オブリビオン」は現象学的に言って、内在的領域を構築する。これは、鑑賞者がアリン・ルンジャーンの細部にまでこだわった内なる世界への招待状のようである。最終的に、鑑賞者に残されているのは自身の解釈である。物事の逆転が政治的行為と見なされる場合、アリン・ルンジャーンの「オブリビオン」は、他者性を受け入れるために自己内の革命のように、鑑賞者の慣れ親しんだ感覚と心を刺激することによって集合的な意識を目覚めさせることを期待するのだ。

アーティストについて

  • Arin Rungjang

アリン・ルンジャーン / Arin Rungjang(1975年、バンコク生まれ、バンコク在住)は、歴史的資料を巧みに再考し、複数の時間、場所、言語で主要な物語とマイナーな物語を重ね合わせることで知られている。ルンジャーンの興味は、タイの歴史のあまり知られていない側面と、彼の実践の現場と文脈における現在との交点にある。時間と空間を超えて遠くの事象をまとめることができる対象は、彼の探求の中心である。彼はさまざまな表現手段にまたがる実践があり、多くの場合、ビデオやサイト・スペシフィックなインスタレーションを伴う。歴史と日常生活の経験の探求において、彼は巧みに資料を分析し、小さな事象を介在させてマスター・ナラティブ(全体社会の支持を得る支配的な語り)を再考する。

最近の展覧会には、「Ravisara」(DAAD Galerieドイツ、ベルリン、2020年)、 「アリン・ルンジャーン展:They Beat Your Father」(ShanghART Singapore、シンガポール、2019年)、「Spectrosynthesis II - Exposure of Tolerance: LGBTQ in SEA」(バンコク芸術文化センター、タイ、バンコク、2019年)、 「Bengawan Solo」(Portikus、ドイツ、2018年)、「SUNSHOWER:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで 」(森美術館、国立新美術館、2017年) 「ドクメンタ14」、カッセル(ドイツ)、アテネ(ギリシャ)、2017年)、「Mongkut」(Satellite 8 Programme、Maison d’Art Bernard Anthonioz、パリ、CAPC Musée d'art contemporain、フランス、ボルドー 2015年)、「APB Foundation Signature Art Prize」(シンガポール美術館、2014年)がある。

中国、上海で開催された「第12回上海ビエンナーレ:Proregress」(2018年)、日本の「越後妻有アートトリエンナーレ2018」にも参加している。イタリア、ヴェネツィアで開催された第55回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013年)では、タイ代表となった。

OBLIVION, 2021
Whole Installation incl.
Sculpture: metal sling, brass
Painting: metal dusts on linen
Video: Single Channel with Sound
Objects: Piano, Replicated letter King Rama VI, Booklet
Sculpture: W300 x L300 x H300 cm
Painting: H240 x L300 cm ( H100 x W80 cm Each)
Video: 18.13 minutes
Objects: Size variable

Credit: Oblivion, Arin Rungjang, Nova Contemporary, Bangkok, Thailand

Information

OBLIVION

開催期間
2021年10月28日 - 2022年2月5日
会 場
Nova Contemporary, Bangkok
Ground Floor of Baan Somthavil Soi Mahadlek- Luang 3, Rajdamri Road, Lumpini, Thailand Khwaeng Lumphini, Khet Pathum Wan, Krung Thep Maha Nakhon 10330
電 話
+66 90 910 6863
営業時間
午前11時 − 午後7時 火〜土
URL
http://www.novacontemporary.com

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団