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バングラデシュにおける現代アート 60年史(第5章、全6章)

Bangladesh

タキール・ホサイン ( Takir Hossain ) / 訳:藪本 雄登

Kamruzzaman Sagar

デュラル・チャンドロー・ゲイン(Dulal Chandrow Gain 1972-)は、洞窟画の影響を大きく受けています。彼の絵画に繰り返し描かれている主題は、バイソン、オーロックス、鹿、馬などの大型の野生動物や、様々なエッチングで描かれた動物の形態だけでなく、人間の手の痕跡、無定形の形態、伝統的な人形の模様などです。彼の絵画は、黄色、白、黒の色調が混在しているのが特徴です。彼の作品の中で、人間を描いた作品は珍しく、より詳細で自然主義的な動物の形のイメージとは対照的に図式化されています。彼は獣のような形とその背景との間のバランスを保っており、そのバランスが絶望感を表しています。

ナガルバシ・バルマン(Nagarbasi Barman 1973-)は、魚、漁網、川辺の生活、そしてそれらの人間との関係と田園的な自然に夢中になっているようです。彼の作品は時に自身の生まれ育った村や様々な側面を取り上げています。最も重要な点は、彼の版画作品が都市生活だけに関連したものではないということです。彼の作品のほとんどは、圧倒的に魚や船、釣り針や漁網に焦点を当てています。

アヌクル・マジュムダル(Anukul Majumdar 1974-)の作品は、母性、子供時代、そして純粋で素朴な雰囲気を深く掘り下げています。彼の描く人物は実在感に満ちています。彼の筆致は非常に荒く、曲線や捻じれた線を多用しており、作品は、人生、愛情、真髄の意味の深い本質を私たちに与えてくれます。アヌクルはバリサルの人里離れた地域の出身です。彼は幼少期や少年期の記憶などを思い起こします。水泳、釣り、村の周りを歩き回ることが日中の定期的な活動でした。村を出た後、街は彼にとって非常に色あせて、生気がなく見えました。その後、これらのテーマは彼の絵画に大きく劇的に現れるようになりました。


  • Anukul Majumdar

ビプロブ・クマール・ダス(Biplob Kumar Das 1974-)の初期の表現方法は純粋に写実的であり、この画家は題材の細部にまで踏み込みました。静謐な場所が彼に大きな影響を与え、彼は穏やかな自然、川の輝きを描きました。その後、彼は抽象表現主義ともいえる形や構図、質感に大変没頭するようになりました。それ以来、彼の絵画では色が主役となっています。

アリフール・ラーマン(Arifur Rahman 1974-)は、ポップ・アートの影響を強く受けています。ポップ・アートとは、1950年代にアメリカやイギリスで生まれ、1960年代に盛んになった芸術運動で、大衆文化や商業文化からインスピレーションを得ています。彼の絵画で繰り返し見られる特徴は、開花した花、花瓶、テーブルの上の開いた本、リンゴ、バイオリン、ヌードやセミヌードの人物、ワインの瓶やグラス、ティーポットやカップ、授乳中の女性、切望して横たわる女性、緑の庭などです。また、人々の活動に焦点を当てた酒場のシーンも描いています。

レゾワン・ピロウ(Rezowan Pilow 1974-)は、風景全体の描写、家事に追われる女性、自然の雄大さ、鳥のさえずりや女性の上を飛ぶ鳥、孤独な女性などを表現することに情熱を注いできました。彼の作品は、現代の生活や時代をも表現しています。この画家は空間を使って、徐々に人物との関わりを深めていきます。彼の描く女性の姿は、常にキャンバス上で圧倒的な存在感を放っています。彼はイメージを描くだけでなく、そこに人間の感情や生き生きとした表情を注ぎ込んでいます。

アスマ・アクベル(Asma Akber 1975-)の芸術との絆は、彼女の幼少期から繋がっているようです。彼女は同時に非客観的、非具象的、自然主義的な画家でもあります。アスマのテーマとアプローチは、生理学的な実験と密接に結びついています。彼女は、幻想と感情をも自身の絵画に加えています。色使いは濃く、表現力に富み、ノスタルジックです。彼女の絵画は、個人的なテクニックと、自然の陰影効果や本質を表現するという点で素晴らしいものであり、主に、長い時間をかけて魂の中で育んできた想像力からインスピレーションを得ています。彼女は心から生命を感じ、永遠の時の真理を感じ、子供の頃の記憶を思い出し、経験と観察から人生の正確な意味を得ています。

  • Asma Akber

Maksuda Iqbal Nipa (1975-)は自然から色を取り入れており、色彩は彼女の作品の中で最も重要な側面です。彼女は色を用いて様々な面で実験的な制作をするのを好んでいます。彼女は直接色を塗り、キャンバスの上に厚い層を重ねていきます。その積み重ねがニパの作品に独特のタッチを与え、作品に独特の特徴をもたらしています。彼女は色を塗ることに集中しており、深い色の層が独特の風合いを醸し出し、それが彼女の作品のすばらしい特徴となっています。彼女の絵画は、色の本質を表現し、その色が実際は何を意味しているのかを表現しています。ニパが長年かけて生み出したこの技法は、非常に高価で時間のかかるものであり、膨大な努力と献身を必要とします。ニパの美しさへの追求と、自然への思索の積み重ねが、彼女の絵画に鮮やかで穏やかな自然の描写が維持できるように影響を与えています。

  • Maksuda Iqbal Nipa

アシュラフル・ハサン(Ashraful Hasan 1977-)は、知的で堅実な画家の一人であり、彼の作品は、私たちに斬新で目新しい何かを考えさせてくれます。アクリル、木炭、パステルをベースにした彼の作品は、繊細なディテールと力強いドローイングが特徴で、半具象的な表現を明確化し構成する強いセンスがうかがえます。彼は極めて洗練された洞察力をもって、技術と巧みさを駆使しながら、しばしば森林破壊や人間の非人道的な側面を表現しています。彼は題材の細部にまで踏み込むことを好み、焦点を当てたものの表層の重要な細部に留まりながら自らの表現方法を構築する方法をとります。

カムルザマン・サガール(Kamruzzaman Sagar 1977-)の作品は、人生の複雑さを深く掘り下げ、シュールレアリスティックな比喩を自らの版画作品に織り交ぜるという素晴らしい試みに挑んでいます。彼の単色版画はすべて、いくつかのセクションに分けられ、それぞれのセクションは他のセクションとは異なる物語を表しています。彼の版画作品は、人類の様々な道のりを探求しており、鳥類と人間の動きは、彼の作品の中で非常によく登場する特徴です。彼の描く人物は感情的で心に強く訴えかけてくるように見えますが、この画家は人間の孤立と論理的な説明の間のつながりに関心を持ち続けています。彼はまた、幻想や感情を作品に加えています。

  • Kamruzzaman Sagar

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著者について
タキール・ホサイン (Takir Hossain) は、美術評論家、文化キュレーターとして、長い間、現代のバングラデシュの芸術と文化について情報発信を続けている。彼の強い関心は芸術と文学にあり、美術評論家としての批評は、多くの著名なアーティストの書籍、パンフレット、バングラデシュ国内外の美術雑誌、その他多くの創造的な出版物に掲載されている。また、国内外のセミナーで講演を行うことも多く、数々のアート・コンペティションやカーニバルの審査員も務め、ヨーロッパやアジアの様々な国で開催された国際的な展覧会の取材活動を行っている。
ライター連絡先:takir75@gmail.com