Exhibitions

紀南アートウィーク2021

~ 自然と信仰、歴史と文化が息づく地、和歌山県『紀南』地域を舞台にした芸術祭 ~

Japan

紀南アートウィーク実行委員会

Nov 18 - Nov 28, 2021

Photo by Manabu Shimoda – coamu creative

紀南アートウィークとは、和歌山県紀南地域/牟婁郡を舞台としたアートイベントであり、プロジェクトです。アーティスティック・ディレクターに宮津大輔氏を迎えて、和歌山県紀南地域の様々な場所や施設を舞台に現代アート作品の展示を行っています。地域の事象とグローバルなアーティスト達との邂逅、そして交流を、和歌山県紀南にて体験でき、同イベントでは紀南とアートのみならず文化、風俗に関する様々なシンポジウムや、教育機関や博物館等との共同ワークショップ、トークセッション等を開催しています。

紀南アートウィークの目的は、①紀南アートウィークでの展示、②レクチャー、ワークショップ等での情報発信を通じて、紀南地域/牟婁郡の歴史や文化を再発見し、紀南地域と全世界との文化的交流を深化させ、その素晴らしさを全世界に紹介することにあります。

和歌山県紀南地域が所在する牟婁郡の「牟婁」という地名には「籠もる」「隠る」「神々の室」という由来があり、豊かな山林資源の中に籠り、内面的な世界を探求することに秀でた歴史的な特色を有しています。高野山の信仰や熊野古道の宗教観は、社会的地位や、信仰、性別等を問わない日本における寛容性と多様性の源泉であり、南方熊楠や長沢芦雪といった奇想天外な人物を輩出し、魅了してきた歴史があります。

その一方、本州最南端の半島である紀南地域は、「開放性」を特色として、かつて黒潮ともに移民文化を醸成してきました。長い海岸線と良質な木材は、古代から高い造船技術を発達させ、物資輸送や水軍の拠点として、歴史上大きな役割を果たしています。堺で最初に利用された船は紀州富田の船であり、かつて富田浦は「港」としての起点を担い、経済文化の中心地でもありました。しかし、現在は残念ながら、牟婁の由来や過去に繁栄した港の存在は忘れ去られているため、本活動を通じて、その歴史的・文化的資産を現代に蘇らせたいと考えています。

紀南アートウィーク2021 オフィシャルガイドブックは、展示会場やアーティスト情報を整理し、展示会場や関連施設で配布しています。また、下記ダウンロードボタンからダウンロードも可能です。
ガイドブックダウンロード
 紀南アートウィーク2021 オフィシャルガイドブック
コラムダウンロード
 なぜ紀南アートウィークか

参加アーティスト及び展示作品について

一柳 慧(日本)
1933年2月4日、神戸生まれ。作曲家、ピアニスト。作曲を平尾貴四男、池内友次郎、ジョン・ケージ、ピアノを原智恵子、ヴィヴェレッジ・ウェブスターの各氏に師事。
第18回(1949)および20回(1951)毎日音楽コンクール(現、日本音楽コンクール)作曲部門第1位入賞。1954年から57年までニューヨークのジュリアード音楽院に学ぶ間、エリザベス・クーリッジ賞(1955)、セルゲイ・クーセヴィツキー賞(1956)、アレキサンダー・グレチャニノフ賞(1957)を受賞。
現在、TIMEの芸術監督、アンサンブル・オリジン――千年の響き音楽監督、日本音楽コンクール顧問、セゾン文化財団評議員、サントリー芸術財団評議員、神奈川芸術文化財団芸術総監督などをつとめ、現代音楽の普及にも携わる。

《ピアノ音楽第2》1959年、演奏:河合拓始
五線譜ではなく、自由な図形などを用い書かれた「図形楽譜」は、奏でる側の解釈で一期一会の演奏となります。一柳慧は、音楽にこうした偶然性を取り入れることで、作曲家による厳密なコントロールという西洋音楽の在り方を見直しました。河合拓始の多彩な奏法を駆使した、空間性を感じさせる演奏は、私たちを斬新な音の旅へと誘うことでしょう。
※飛行機の発着陸の時間に合わせて、音楽作品が再生されます。
■展示場所:白浜エリア 南紀白浜空港

  • 一柳 慧

  • ピアノ音楽第2, 1959年, 演奏:河合拓始

ホー・ツーニェン(シンガポール)
ホー・ツー・ニェンの作品–フィルム、インスタレーション、パフォーマンス−はしばしば歴史的・理論的なテキストとの関わりからはじまります。 近年の作品には、現在進行中のメタ・プロジェクトである「The Critical Dictionary of Southeast Asia」の下、トラ人間(Weretiger)(One or Several Tigers, 2017)や三人のエージェント(Triple Agent)(The Nameless, 2015)などのメタモルフィックな人物が登場します。
ツーニェンの作品の特徴の一つに、研究者、プログラマー、デザイナー、ミュージシャンなどとのコラボレーションがあります。過去には、Black to Comm、Vindicatrix、Aki Onda、Oren Ambarchiなどのミュージシャンともコラボレーションを行いました。
ツーニェンの個展は、山口情報芸術センター[YCAM](2021年)、Edith-Russ-Haus for Media Art(オルデンブルク、2019年)、Kunstverein in Hamburg(2018年)、Ming Contemporary Art Museum[McaM](上海、2018年)、Asia Art Archive(2017年)、Guggenheim Bilbao(2015年)、森美術館、(2012年)、The Substation(シンガポール、2003年)などで世界各地で開催されています。 第54回ヴェネチア・ビエンナーレ(2011年)では、シンガポール館の代表も務めました。

《ボヘミアン・ラプソディ・プロジェクト》2006年
歴史や思想の豊かな文脈から、時に演劇的手法を取り入れた作品を制作するホー・ツーニェン。本作は、現在はナショナル・ギャラリー・シンガポールとなった旧最高裁判所を舞台に、クィーンの名曲にのせて出演者オーディションの記録をつなげ作品化しています。裁判官と容疑者の演者に多民族国家にして、長く英国の植民地であった同国の成り立ちを垣間見ることができます。
■展示場所:川久ミュージアム

  • ホー・ツーニェン

  • ボヘミアン・ラプソディ・プロジェクト, 2006年

アデ・ダルマワン(インドネシア)
アデ・ダルマワンは、アーティスト、キュレーター、ruangrupaのディレクターとして、ジャカルタを拠点に活動しています。インドネシア・アート・インスティテュート(ISI)のグラフィック・アート学科で学んだ後、ジョグジャカルタのCemeti Contemporary Art Gallery(現Cemeti Art House)で初個展を開催。翌年の1998年には、Rijksakademie Van BeeldendeKunstenでの2年間のレジデンスのためにアムステルダムに滞在しました。ダルマワンの作品は、インスタレーション、彫刻、ドローイング、プリント、ビデオなど多岐にわたります。
主要な個展に「Magic Centre」Portikus(2015)、Van AbbeMuseum(2016)、グループ展に光州ビエンナーレ(2016)、シンガポール・ビエンナーレ(2016)、「Doing Business with the Dutch」Lumen Travo Gallery(2018)などがあり、キュレーターとしては、「Riverscape in-flux 」(2012)、「Media Art Kitchen」(2013)、「Condition Report」(2016)、「Negotiating the Future: 6 th Asian Art Biennial in Taiwan」に参加しました。またruangrupa名義では「TRANSaction: Sonsbeek」(2016)をキュレーションしました。
2006年から09年までジャカルタ・アーツ・カウンシルのメンバーを務め、2009年にはジャカルタ・ビエンナーレのアーティスティック・ディレクターに任命されました。2013年、2015年、2017年のジャカルタ・ビエンナーレではエグゼクティブ・ディレクターを務めています。

《哲人のサッカー(試合)》2011年
世界最高峰の国際展ドクメンタ15(2022 年) で芸術監督を務める、アート・コレクティブであるルアンルパの中心人物アデ・ダルマワン。本作は( 現在の)哲学だけでなく、自然学や数学をも含む学究的営為の総体たる古代ギリシャ哲学と、ドイツ観念論からマルクス主義や実存主義へと連なる近代ドイツ哲学の関係性を、サッカー・ゲームに準え表現しています。
■展示場所:川久ミュージアム

  • アデ・ダルマワン

  • 哲人のサッカー(試合), 2011年

ウー・チャンロン(台湾)
Chang-Jung Wu、1984年台湾生まれ。2012年に台湾の国立台南芸術大学大学院造形芸術学科で学位を取得しました。彼女の作品は世界各国の主要な展覧会にて展示され、国際的な評価をえています。近年ではThe Taipei Digital Art Center、Manchester Chinese Centre for Contemporary Art、The 58th International Short Film Festival、2011年ヴェネチア・ビエンナーレ、The 7th Busan International Video Festival、Ambiguous Being: who is afraid of identity?(ベルリン)などに作品が出展されました。またChang-Jungは、2012年のオーバーハウゼンの第58回国際短編映画祭で受賞を果たし、2010年のArt Taipeiの推薦新人アーティストとして選出されました。

《Documentary IV-Little mince cloth》2010年
台南を拠点に活動する呉長蓉は、自身の回りで起こる日々の出来事から、世界経済やエネルギー供給、エコロジー問題を想起させる作品を制作しています。本作は家業である養豚をモチーフにしながら、生命の誕生から、食肉化されるまでの記録を万華鏡のようにつなぎ合わせることで、家畜の在り方に潜む「国家の起源」や「統治のあり方」まで思い起させます。更には、近年の動物解放論に代表される倫理的な考え方に代表される、肉食の是非を含めた動物の権利をめぐる議論をも示唆しているといえるでしょう。
■展示場所:川久ミュージアム

  • ウー・チャンロン

  • Documentary IV-Little mince cloth, 2010年

磯村 暖(日本)
1992年東京都生まれ。2016年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。2017年ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校第2期卒業(卒業時金賞受賞)。Asian Cultural Councilニューヨークフェローシップ2019年グランティー。平面、立体、映像、インスタレーション、パフォーマンス、サウンドなど表現は多岐にわたる。近年の主な個展に、「OFF THE SIDELINE」(EUKARYOTE、東京、2020年)、「んがんたんぱ」(銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM、東京、2020)、「わたしたちの防犯グッズ」(銀座蔦屋書店アートウォールギャラリー、東京、2019年)、「LOVE NOW」(EUKARYOTE、東京、2018年)、「Good Neighbors」(ON SUNDAYS/ワタリウム美術館、東京、2017年)、「地獄の星」(TAV GALLERY、東京、2016 年)。近年の主なグループ展に「Moving Images」(EUKARYOTE、東京、2021)、「都市は自然」(セゾン現代美術館、長野、2020)、「TOKYO 2021」(東京、TODA BUILDING、2019年)、「City Flip-Flop」(台北、空總臺灣當代文化實驗場、2019年)、「留洋四鏢客 」(台北、TKG+、2019年)など。

磯村暖は、ヴァナキュラー(ある土地に根差した固有)な事象に対し、多元的視点から人間賛歌ともいうべき作品を制作しています。日本語の「ん」は文字として一つでも、微妙に異なった発音が複数存在するように、本作は、言語の不安定で限定的な役割から想を得ています。情報伝達の中心である口について考えながらも、鼻を使い様々な音を発生させることで、伝える相手やその方法、伝わるまでの時間における差異をコラージュしています。
■展示場所:川久ミュージアム

  • 磯村 暖

  • 左の鼻の音 無題の鍵盤曲 右の鼻の音, 2021年

長谷川 愛(日本)
アーティスト、デザイナー。バイオアートやスペキュラティヴ・デザイン、デザイン・フィクション等の手法によって、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(通称 IAMAS)にてメディアアートとアニメーションを勉強した後ロンドンへ。数年間Haque Design+ Researchで公共スペースでのインタラクティブアート等の研究開発に関わる。2012年英国Royal College of Art, Design Interactions にてMA修士取得。2014年から2016年秋までMIT Media Lab,Design Fiction Groupにて研究員、2016年MS修士取得。2020から自治医科大学と京都工芸繊維大学にて特任研究員。(Im)possible Baby, Case 01: Asako & Morigaが第19回文化庁メディア芸術祭アート部門にて優秀賞受賞。森美術館、上海当代艺术馆、イスラエルホロンデザインミュージアム、ミラノトリエンナーレ2019、アルスエレクトロニカ、NY MoMA等、国内外で展示を行う。著書「20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業 」を出版。http://aihasegawa.info

《私はイルカを産みたい…(I wanna deliver a dolphin…)》2011~2013年
長谷川愛の作品は、バイオ・アートやスペキュラティブ・デザイン(課題解決型ではなく、その根幹に潜む問題について提起する考え方)などの手法により制作されています。本作では、爆発的な人口増加や食糧問題、更には貴重な海洋生物保護と生息環境保全に向けた解決視点を示唆しています。
■展示場所:アドベンチャーワールド

  • 長谷川 愛

  • 私はイルカを産みたい…(I wanna deliver a dolphin…), 2011~2013年

岸 裕真(日本)
1993年生まれ。東京を拠点に活動。2019年東京大学大学院工学系研究科修了、東京藝術大学先端芸術表現科修士課程に在籍。AI(人工知能)を中心としたテクノロジーを駆使した作品を制作。AIを「Artificial Intelligence」ではなく「Alien Inteligence」(異質な知性)として扱い、ただ道具としてではなく一つの知性としてAI と共創することで、「人間とテクノロジー」の関係性を読み替えることを試みる。NIKEやVOGUEにも作品が起用されるなど、多領域にわたり活動中。これまで参加した展覧会に「 絵画の見かた reprise」展(2021, 東京)、個展「Neighbors' Room」展(2021, 東京)、個展「Imaginary Bones」展(2021, 東京)など。

《Utopia》2021年
人工知能(以下「AI」)との共作である岸裕真の作品には、単一的な解や表現への疑義あるいは否定が通底しています。加えて、シンギュラリティ(コンピュータが人間を超える「技術的特異点」)以降の世界が、人類と機械による平和的な共存共栄の到来であることを予感させます。AI の力を借りることで見慣れた光景や図像が、今までとは全く異なった本質を現します。海の楽園と思しき世界に、あなたは、一体何を見ることができるでしょうか。
■展示場所:アドベンチャーワールド

  • 岸 裕真

  • Utopia, 2021年

志村 信裕
1982年東京都生まれ。​​2007年武蔵野美術大学大学院映像コース修了。
秋吉台国際芸術村でのレジデンスをきっかけに2013年から2015年まで山口市を拠点にする。2016年から2018年まで文化庁新進芸術家海外研修制度により、フランス国立東洋言語文化大学 (INALCO) の客員研究員としてパリに滞在。身近な日用品や風景を題材にした映像インスタレーション作品から、近年では各地でのフィールドワークを元に、ドキュメンタリーの手法を取り入れた映像作品を制作。ローカルな視点から、可視化され難い社会問題や歴史に焦点をあてるプロジェクトを手がける。
現在、千葉県を拠点に活動。
https://www.nshimu.com/
Instagram

  • 志村 信裕

《jewel》2009年
志村信裕は、日用品などに映像を映し出す独自のインスタレーションによって、心の奥底に潜むノスタルジックな感情を呼び覚まします。また、早くから美術館のようなホワイト・キューブから脱し、屋外で数多くの作品を投影してきました。本作は色とりどりのボタンが、タイトルの示す通り輝きながら頭上に落下してくることで、見慣れた風景を特別な場所へと一変させます。
■展示場所:真珠ビル

《Pool》2009年
水面に浮かんでは消える泡たちは、まるで朧げな記憶のようです。一方で動詞としての”pool”は、集める、貯えるといったイメージと相反するような意味を有しています。光が紡ぎ出す幻像は、私たちに様々な記憶を蘇らせると共に、それらの堆積が刻む時間の確かさを思いおこさせます。
■展示場所:田辺駅前商店街

  • jewel, 2009年

  • Pool, 2009年

小林 健太(日本)
1992年神奈川県生まれ。東京と湘南を拠点に活動。
主な個展に「#smudge」 ANB Tokyo 6F Studio1 (東京, 2021年)、「Live in Fluctuations」Little Big Man Gallery(ロサンゼルス、2020年)、「The Magician’s Nephew」rin art association(高崎、2019年)、「自動車昆虫論/美とはなにか」G/P gallery(東京、2017年)、主なグループ展に「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」水戸芸術館(水戸、2018)「GIVE ME YESTERDAY」プラダ財団 Osservatorio(イタリア、2016年)など。2019年には、マーク・ウェストン率いるダンヒル、2020年春夏コレクションとのコラボレーション、またヴァージル・アブロー率いるルイ・ヴィトン、メンズ秋冬コレクション2019のキャンペーンイメージを手がける。主なコレクションに、サンフランシスコアジア美術館(アメリカ)などがある。2016年に写真集『Everything_1』、2020年に『Everything_2』がNewfaveより発行。
https://kentacobayashi.com/
Instagram/

《無題(わたしはここにいた)》2016年
敢えて写真家と名乗る小林健太は、常に「真(まこと)を写すとは何か?」という問いにより写真を捉え、様々な試みの中からその輪郭を形づくり続けています。本作は、画像処理ソフトの指先ツールを用い、絵画におけるブラッシュ・ストロークのように操ることで制作されています。それは、一見クールなデジタル画面に潜む情動を現出させると共に、そこに伏在する視覚的認知行動と写真との関係性をも露わにしています。
■展示場所:真珠ビル

  • 小林 健太

  • 無題(わたしはここにいた), 2016年

ミン・ウォン(シンガポール)
1971年、シンガポール生まれ
ヴィデオ、インスタレーション、パフォーマンスの手法を用いて、ワールドシネマと大衆文化を語り直し、映画言語、社会構造、アイデンティティ、内省といった幾つもの層を重ね上げていく。近年の展覧会に、アジア・アート・ビエンナーレ(台中、2019年)、釜山ビエンナーレ(韓国、2018年)、ダカール・ビエンナーレ(セネガル、2018年)、ダッカ・アート・サミット(バングラデシュ、2018年)、SAVVY コンテンポラリー(ベルリン、2018年)がある。主な個展に、UCCAユーレンス現代美術センター(北京、2015年)、資生堂ギャラリー(東京、2013年)、REDCAT(ロサンジェルス、2012年)、原美術館(東京、2011年)など。また、シドニー・ビエンナーレ(2016年、2010年)、アジア太平洋トリエンナーレ(2015年)、上海ビエンナーレ(2014年)、リヨン・ビエンナーレ(2013年)、リバプール・ビエンナーレ(2012年)、光州ビエンナーレ(2010年)、パフォルマ11(ニューヨーク、2010年)などに参加。2009年には第53回ヴェネチア・ビエンナーレのシンガポール館代表に選出され、個展「ライフ・オブ・イミテーション」にて審査員特別表彰を受賞。

《偽娘恥辱㊙部屋》2019年
古今東西の名作映画を再演することで、言語やナショナリティの問題を鋭く追究するミン・ウォン。若き日の神代辰巳らが監督を務めた1970年代成人向け映画をモチーフとする本作は、インターネット上に拡散される偽娘(ウェイニアン)や男の娘(おとこのこ)と、テクノロジーの発達により駆逐された大衆文化を架橋します。また、男性中心の視線を侵犯・逸脱することで、多様な価値観を提示しているともいえます。
■展示場所:真珠ビル

  • ミン・ウォン

  • 偽娘恥辱㊙部屋, 2019年

河野 愛(日本)
1980年滋賀県生まれ。2007年京都市立芸術大学大学院 美術研究科 染織 修了。在学中にRoyal College of Art 交換留学。現在、京都芸術大学美術工芸学科専任講師。主な展覧会に、滋賀県立美術館 リニューアルオープン記念展「Soft Territory かかわりのあわい」(2021)など。
https://aikawano.com/
Instagram

  • 河野 愛

《こともの foreign object》2021年
<こともの> とは「異物/異者」の古語であり、真珠は貝の中に「異物」が入ることで、それを包むように結晶が何千層も作られてできあがります。真珠はこの世とあの世の継ぎ目に位置する宝石であるとも言われています。河野自身の妊娠の経験と真珠生成の類似性から着想を得た「乳児と真珠」の関係性や、人間の営みや記憶の循環を探る作品です。
■展示場所:真珠ビル

《 | 》2021年
河野愛は、布、骨董、写真等の多様なメディアを利用し、場所や人の記憶や時間、価値の変化に関する作品を発表しています。河野の祖父は、白浜温泉老舗「ホテル古賀の井」の創業者であり、彼女は幼少期より古賀浦の入り江で夏を過ごしていました。白浜エリア6箇所に設置された本作は、当時ホテルの屋上で輝いていたネオン看板を活かした2018年に発表した作品の続編にあたる新作です。
■展示場所:白浜町内各所

  • こともの foreign object, 2021年

  • |, 2021年

アピチャッポン・ウィーラセタクン
タイ北東部のコンケンで育つ。1994年から映画やビデオの短編作品を作り始め、2000年に初の長編作品を完成させる。また、1998年以降、多くの国で展覧会やインスタレーションを行っており、ウィーラセタクンの作品は、しばしば非線形で、強い価値転倒を生じさせ、記憶を扱い、個人的な政治や社会問題を扱っている。
ウィーラセタクンのアートプロジェクトと長編映画は、世界でも広く認知され、カンヌ映画祭の2つの賞を含む多くの映画祭で賞を獲得している。2005年には、タイの文化省から、タイで最も権威のある賞の一つであるシルパトルン(Silpatorn)を授与された。2008年には、フランスの文化大臣から芸術・文学勲章シュヴァリエのメダルを授与されており、2011年には、同じ分野でもう一つの名誉であるオフィサーメダル(Officer Medal)を、その後2017年にはコマンドゥールメダル(Commandeurs medal)を授与されている。
2006年末に完成した映画「Syndromes and a Century」は、タイ映画として初めてヴェネツィア映画祭のコンペティション部門に選出された。また、ウィーラセタクンは、世界人権宣言60周年を記念して、国連人権高等弁務官のために短編映画の制作を依頼された20人の国際的なアーティストや映画監督の一人でもある。2009年には、オーストリア映画博物館から、彼の作品に関する主要な英語のモノグラフが出版された。

《母の庭》2007年
アピチャッポン・ウィーラセタクンは、数々の展覧会参加と併行し映画監督としても活躍。『ブンミおじさんの森』(2010年)で、第63回カンヌ国際映画祭のパルム・ドール(最高賞)を受賞しています。母の庭へのオマージュである本作は、むせかえるような緑濃いジャングルと、そこに棲むヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌの手になる昆虫たちが、私たちを異世界の深淵へと誘います。
■展示場所:高山寺

  • アピチャッポン・ウィーラセタクン

  • 母の庭, 2007年

前田 耕平(日本)
1991年和歌山県生まれ。2014年パリ国立美術学校エコール・デ・ボザール交換留学。2015年大手前大学メディア芸術学部芸術学科卒業。2017年京都市立芸術大学大学院美術研究科構想設計専攻修了。
人や自然、物事との関係や距離に興味を向け、様々なアプローチで探求の旅を続けている。自身の行為と体験を手がかりに、国内外で映像やパフォーマンスなどの作品発表を行う。プロジェクトに南方熊楠の哲学思想を追った「まんだらぼ」などがある。現在、大阪の元造船所跡地のシェアスタジオ「SSK(Super Studio Kitakagaya)」を拠点に活動。
主な展覧会に「つながりの方程式」京都芸術センター、個展「パンガシアノドン ギガス」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、個展「イトム」Gallery PARCなどがある。六甲ミーツアート芸術散歩2019 神戸市長賞受賞。

  • 前田 耕平

《Breathing》2021年
和歌山県・田辺市出身の前田耕平は、人や自然、事象との関係性について、自身の体験を手がかりに作品化しています。展示場所となる古刹で発見された「高山寺式土器」に着想を得て、本作は制作されました。それは、精霊から神々、そして仏のすまう山が有する祈りや時間、そして智慧の積層を可視化しているといえるでしょう。
■展示場所:高山寺

《Over to you》2017年
郷土の偉人である南方熊楠の思想に大きな影響を受けた前田は、「事・物・心」(物:物理学領域、心:心理学領域、事:推論・予知領域)といったいわゆる現実世界の先に深く「直入(ルビ:じきにゅう)」(全身全霊で深く潜ること)することを試みます。自己と他者=熊楠をモチーフとした大凧が空に上がる様は、マクロとミクロの両宇宙や「大不思議」(全てを包含した根源的な場)理解への糸口といえるでしょう。
■展示場所:南方熊楠顕彰館

  • Breathing, 2021年

  • Over to you, 2017年

アフ (アフザル・シャーフュー・ハサン)
1975年、モルディブのマーレ生まれ。アフは18歳からアーティストとして活動を開始。グラフィックデザインを学んだことから、初期キャリアでは広告業界にて活躍しました。その傍、アート作品を制作をし、AFUはモルディブのアートコミュニティの発展に大きく寄与することとなります。特に2010年以降は作品の制作に専念するようになりました。社会的、政治的、環境的なテーマを映し出した彼の作品は、マレーシア、中国、インド、スリランカ、モーリシャス、日本、ドイツ、タンザニア、イギリスなど、世界各地の個展やグループ展で展示されてきました。現在、彼の作品の多くは、モルディブ国立美術館に収蔵されています。2014年には、モルディブ国家から芸術賞を授与されました。2020年にバース・スパ大学(イギリス)で美術の修士課程を修了。現在、バース・スパ大学の「EMERGE」でレジデンスアーティストとして滞在しています。

《モルディブの物語》2012年
「インド洋の真珠」と謳われ、世界中から観光客を集めるモルディブですが、一方で与・野党間の政争が絶えず、近年では中・印代理戦争の様相を呈しています。アフは砂絵によるアニメーションによって、観光と並ぶ重要産業であるカツオ、マグロ漁の過酷な労働やクーデター、地球温暖化による海面上昇といった楽園が有する別の顔を炙り出しています。
■展示場所:田辺駅前商店街

  • アフザル・シャーフュー・ハサン

  • モルディブの物語, 2012年

山内 光枝
2010年頃に裸の海女が佇む一枚の古い写真と出逢い、それまで抱いていた日本人像や人間像が溶解していくような衝撃を受ける。その後現在にいたるまで、主に黒潮・対馬暖流域の浦々で滞在を重ねながら、海を基点とした人間や世界のあらわれを母胎に、表現活動を続けている。2013年済州ハンスプル海女学校(韓国・済州島)を卒業し、素潜り水中撮影を体得。2015年よりミンダナオ沿岸(フィリピン)を中心に滞在制作を行い、フィールドを海洋アジアへと広げる。近年の活動の原点である玄界灘を舞台に制作した長編『つれ潮』が、東京ドキュメンタリー映画祭2019にて奨励賞を受賞。2020年より日本統治下の“フザン”に暮らした家族史に向きあい始め、海峡の渡り方、内なる境界の捉え方を模索している。

《カブグァス(Kabugwas)》2016年
海に生きる人々の生活現場に身を置き、そこを起点に立ち現れる世界観を作品化する山内光枝。タイトルであるカブグァスとは、航海で方角を知る時に目印となる星を意味するビサヤ語(主にフィリピン中南部で使用されている言語)です。済州島の海女学校で体得した素潜り技術により撮影された本作は、あらゆるものを巻き込みながら流動する宇宙のようであり、また、私たちの内に潜む母なる海の存在を喚起させるようでもあります。
■展示場所:田辺駅前商店街

  • 山内 光枝

  • カブグァス(Kabugwas), 2016年

Information

紀南アートウィーク

開催期間
2021年11月18 日(木) - 11月28日 (日)
会 場
和歌山県紀南地域の歴史や文化を体験できる場所
和歌山県田辺市/白浜町
URL
https://kinan-art.jp/event2021/

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団