ARTISTS

メイコ・ナイン (Mayco Naing)/ アーティスト インタビュー – 呼吸の抽象化

Myanmar
Mayco Naing

All images courtesy of the artist

Curated, Edited, Translated and Design by SOCA (School of Contemporary Art Project) in collaboration with AURA Contemporary Art Foundation Aung Myat Htay, Yuto Yabumoto (AURA).

メイコ・ナイン / Mayco Naing(演劇・写真家)

私はこれまで、主に自分の個人的な生活に関する社会問題について詳述する作品制作を教えてきました。ですから、私自身がアートに取り組むときは、こうした問題から離れたいと思っています。物事を詳述する写真作品には、犯罪、麻薬、戦争、レイプなどの問題が多く含まれているので、これらの問題は年中耳にしているわけです。だから私が自分で作品を作るとき、最初はたいてい伝える事柄はもうないと自分に言い聞かせます。なぜならそれは「他の人たちが伝える話」という考えでいっぱいになるからです。こういった問題ばかりにずっと取り組んでいるので、いざ自分で作品を作るとなると、物事を詳述することや事実を記録した作品から離れて、どんどんコンセプチュアル・アートに近づいていくんです。そして、自分ではその方がいいと思って、今まで続けてきました。この建物を撮影したとき、私はこの建物にとても愛着を持ち、毎日のように見に行きました。芝生の上に座って見ていました。私はこの建物を手放すのが怖かったのです。当時は新型コロナの時期で、家からも近かったので、よく行っていました。昔の自分の仕事場によく似ていたので、手放すのが惜しくて、訪れた時には写真を撮っていました。パンデミック期間中はこのように、家賃の関係で閉鎖せざるを得ない場所がたくさんあります。他にもそういう場所があります。埃を被った古いバーで、ネズミが走り回っていて、私も喪失感を感じながら訪れました。私もそこに行ってフィルムカメラで写真を撮りました。このように、新型コロナで失われたものはたくさんあり、その記憶を見に来ただけで心が重くなり、何もできない無力感に襲われ、それを題材にした脚本を書き始めました。新型コロナでは、味覚と嗅覚が短時間しか失われません。私の脚本では、味覚と嗅覚を永久に消して、並行して存在する世界(パラレルワールド)を作りました。私の世界では、すべてがもっと悪く、パニックになっています。現在はまだ希望があり、味覚と嗅覚はまだ取り戻せます。私が書いたのは、二度とそれらが元に戻らない人たちの話です。脚本は写真とは全く関係ありません。写真は、私が見た荒れ果てたホテルや、苦労しているバーの様子を追ったものです。だから、写真が勝手に流れていって、脚本も語り、現実の世界も勝手に回っていくという、3つのものが一緒になったときに、その矛盾したプロセスが面白いと思うんです。

  • Mayco Naing

メイコ・ナインは、1988 年の革命時に生まれた。軍事政権の下で育ったビルマ世代の時代精神を捉えたポートレートシリーズ「 Identity of Fear 」でよく認知されるアーティストである。彼女は、ミャンマーにおいて新しく登場した表現の自由を活用し、特に少数民族の紛争地域に住み込み、一人でも多くの市民アーティストやフォトジャーナリストを育成できるよう、日々活動を行っている。
 
<アーティストの詳細>
https://myanmartevolution.com/artist-mayco-naing/  

WORKS


文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団