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サイ・フチン・リン・ヘット(Sai Htin Linn Htet)/ アーティスト インタビュー – 呼吸の抽象化

Myanmar
Sai Htin Linn Htet

All images courtesy of the artist

Curated, Edited, Translated and Design by SOCA (School of Contemporary Art Project) in collaboration with AURA Contemporary Art Foundation Aung Myat Htay, Yuto Yabumoto (AURA).

サイ・フチン・リン・ヘット / Sai Htin Lin Htet (写真家)

社会的な問題が私の作品の基盤となっています。共感、平和構築、アイデンティティが私の取り組みの主なテーマです。さらに目標は、それらの相互関係と私の置かれている社会の中で何が起こっているかを探ることです。心情的には、「マーヤー」のコンセプトが誕生したのは2015年の選挙よりもずっと前のことで、その頃の私は若者として多くの希望と夢を抱いていました。それは大きな期待と共に次に何が起こるかを想像すること、この国の問題点がなくなるかどうかということです。2015年からの遅い出発は、私たちの夢の状態について、更なる疑問を抱かせました。そして、それらはただの夢なのかどうか、マーヤーは尋ねるのです。けれども、私は自分自身の問いかけ以外に答えはありません。それは、現代の政治的、社会的、経済的な風景やインフラは、私たちが望むようなものなのか。私たちは夢を生きているのか、それとも私たちが望んだものはまだ夢のままなのか。それとも、それは何かに変容したり、現れたりしているのか。私たちはもっと希望を持つべきなのか、それともそれは偽りなのか。あるいは、そのように二極化した希望を持つことはやり過ぎなのか、といったことです。不安定さと不確実さは、私がこの頃から抱いている予感です。だから、私にとっての‘シュレーディンガーの猫’は、かつて一人の市民として持っていた、純粋な希望や夢が、どうなったかを知らず知らずのうちに知っているか、知っていても知らないかが、一つの実体/非実体に集積されたものなのです。それがマーヤーです。解読できないのは、一人の市民/ 私 に与える逆説的な揺らぎと影響であり、その発生自体が「マーヤー」すなわち、他の多くの要素も含んだ幻想とまやかしです。これまでのところ、私が身を任せている進行中のマーヤーには3つの状態があります。ドリームスケープ(夢のような情景)の状態、トランジション(転換期)の状態、そしてナイトメア(悪夢)の状態で、それぞれに特異性があります。これらの状態は、私の精神状態、希望や夢の自画像のようなものです。例えば、これらの状態に近づくとき、私はまず、自分が直面している事態が自己反省のために呼吸可能な雰囲気を提供できるかどうかを考えます。それは、私自身の生い立ちや少数民族など、多様なアイデンティティや所有物と関係があるかもしれません。私の周りでは、多元主義が十分に尊重されていないと感じています。そして、マーヤーは私を、理想的な社会が花開く想像上の次元へと連れて行ってくれました。私はそのような次元を願い、表現し、切望しています。

  • Sai Htin Lin Htet

サイ・フティン・リン・テットはヤンゴンを拠点に活動するアーティストであり、教育者でもある。共感をテーマに、人権、環境問題、平等、差別、アイデンティティなどの問題に焦点をあてている。彼の作品は、民族的背景、アイデンティティ、ジェンダーや検閲等から着想を得て制作がなされている。2019 年にロンドン大学のゴールドスミス・フェローシップを受賞している。

WORKS

文責: Aura Contemporary Art Foundation / アウラ現代藝術振興財団